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 東邦大学医療センター佐倉病院は、増床・改築計画の実施とともに新たなスタートを切るために医療総合情報システムを導入・構築した。医事会計システムのみだった同病院は、基幹システムと部門システムを一気に導入し、それとともに業務改革を推進して導入効果を最大限にする努力を続けている。


増床・改築計画を機に基幹・部門システムを一気に構築

 同大医学部附属病院である大森病院(東京都大田区)、大橋病院(東京都目黒区)に続く第3の医療センターとして1991年9月に千葉県佐倉市に開設された。千葉県佐倉市民の熱心な誘致により実現した佐倉病院は、開設当初から地域医療への貢献、また中核医療機関の使命を果たすため、大学病院として教育・研究の研鑚に務めてきた。開設時に300床でスタートしたが、多様化する医療需要のニーズを満たすため、さらなる地域に密着したより良い医療を提供し、大学付属病院としての役割・機能を果たすため、2007年7月に新棟を竣工し451床へ増床するとともに外来診察室等の増改築を実施している。増床・改築計画ではベッド数の増加はもとより、新生児センター、GCU(Growing Care Unit:)の拡充、分娩室など一連の周産期医療のラインナップ化をはじめ、治療機能の集約化を推進した。

「陳腐化しない戦略的なシステムであるべきだと考えた」という山本副院長
「陳腐化しない戦略的なシステムであるべきだと考えた」という山本副院長

 この増床・改築計画を機に佐倉病院が生まれ変わるもう1つの施策として実施したのが、電子カルテ・オーダリングシステムを中心とした総合医療情報システムの構築だった。それまで佐倉病院は医事会計システムだけが稼働しており、部門システムも未整備で、すべてが紙ベースの指示で業務が流れていた。そのため指示伝票類の処理の煩雑さやオーダーミスによる危険性といった問題をはじめ、業務プロセスの改革の必要性などさまざまな課題を抱えていた。そうした課題を解決し、佐倉病院が生まれ変わるために医療サービスの品質管理とコスト管理を徹底すべく医療総合情報システムの構築に踏み切ったのである。

 佐倉病院は総合医療情報システムの構築・導入に際して、医療サービスの向上や業務効率化をめざした業務改善、ペーパーレスやフィルムレスなどによるコスト抑制といった目的を掲げたが、最大の目標は経営的観点で医療情報システムを活用することだった。

 「患者さんの待ち時間の短縮や予約センターによる一括受付など組織改革を含めた患者サービスの向上を重視したシステムであることを目的にしましたが、将来設計から言えば陳腐化しない戦略的なシステムであるべきだと考えました。そのために経営システムのベースとなるシステム構築をめざしました」。東邦大学医学部教授・佐倉病院耳鼻咽喉科部長であり副院長である山本昌彦氏は、医療総合情報システムのコンセプトをこう述べる。

「スタッフが納得のできるシステム構築ができると判断した」という鈴木氏
「スタッフが納得のできるシステム構築ができると判断した」という鈴木氏

 また、同病院のチャレンジは電子カルテ・オーダリングシステムを中心とした基幹システムと部門システムを一気に構築することだった。新棟建設というタイミングがあったことが大きな要因ではあるが、情報管理課係長の鈴木延広氏は「基幹システムと部門システムを一括で導入しないとシステム化のメリットを最大限に享受できないことは分かり切っていました。新棟竣工という期限がある中ですべての業務タスクをシステム化することは大変な作業でしたが、段階的にシステム導入するよりは導入コストを抑えることができることに加え、蓄積するデータ利用を考えても一気に構築する方が業務の合理化・効率化の効果を引き出せると考えました」と指摘する。構築したシステムは、2006年6月にオーダリングシステムを稼働(リハビリ、IC=Informed Consent、放射線治療を除くフルオーダー)、2007年4月に外来電子カルテ、同年7月に入院電子カルテを稼動させるとともに、残っていたオーダリング機能を順次運用開始している。