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 生涯にわたる国民一人ひとりの健康にかかわる情報や診療記録の整備。その実現はやはり電子カルテなしでは考えにくいが、電子カルテの普及率は依然として政府の目標を大きく下回っているのが現状だ。「ITは道具と割り切って、もっと使い倒したほうがよい」という花岡こどもクリニック院長の花岡康彦氏は、1999年の独立・開業とともに長野県下でいち早くレセコンと連携した電子カルテを導入し、それ以降、患者満足度の向上などに努めている。同氏はIT化によって、ゆくゆくは地域に根ざした“病診・病病連携”の推進にも活用したいと考えている。同院の導入事例は、レセプトオンライン化を機に電子カルテ導入を検討する診療所・クリニックには大いに参考になるだろう。


「オープンでわかりやすい」患者優先の診療を目指す

「診療現場で最も大切なのはコミュニケーション」と話す花岡康彦院長
「診療現場で最も大切なのはコミュニケーション」と話す花岡康彦院長

 花岡氏が開業以来、モットーとして掲げているのは、「オープンでわかりやすい診療」だ。患者には、できる限り情報を開示することを心掛けている。電子カルテに書き込む所見などは、すべて日本語。医師にしか分からない略語などはほとんど使わないという。患者の座る席からも、その操作する姿や画面がよく見える。

 「診療現場で最も大切なのは、人間同士の温もりや心のふれあいといったコミュニケーションです。診察の際は、家族構成や育児環境など、かなり立ち入ったことまで聞き出していますが、それは、ファミリーの全体像を把握した上で、温もりのあるコミュニケーション、ひいては診断が成り立つからです」。

 花岡こどもクリニックの評判は、おもに口コミで拡がった。紹介率が高く、セカンドオピニオンを求めたり、親子二代で訪れたりといったケースは希ではない。

 同クリニックには近隣に住む外国人の患者も訪れる。「国籍はさまざま。言葉で意思疎通がうまくいかないこともあります。なので、ディスプレイ上のシェーマ図を見せながら診察を進めることも多々あります」。

診療の際によく使うシェーマ図などのデータはあらかじめ登録し、すぐに呼び出せるようにしている
診療の際によく使うシェーマ図などのデータはあらかじめ登録し、すぐに呼び出せるようにしている

 診療の際によく使うシェーマ図などのデータはあらかじめ登録し、すぐに呼び出せるようにしている。「電子カルテを操作していると、患者さんより画面に目を奪われるのでは――と懸念する声もありますが、その心配は無用です。患者さんから一時的に目を離すのは、紙のカルテを書いている場合も同じです。自分が使いやすい環境の電子カルテにさえしてしまえば、後は患者さんにもモニター越しに具体的な説明をしやすく、コミュニケーションツールとしてもたいへん便利な“道具”になります」と、一般開業医の危惧を一笑に付す。

 開業以来、もうひとつ変わらない方針が、極力、待たせない診療だ。花岡こどもクリニックでは、患者の待ち時間を短くするために予約制をとっている。開業当初から固定、および携帯電話から24時間の診療時間予約を受け付けるシステムを運用し、2008年にはクリニックのホームページからのインターネット予約、携帯電話端末での画面入力予約も受け付けるようにした。インターネットと携帯電話の対応が功を奏し、ここ数年、待合室の混雑は徐々に緩和されつつある。

 独立・開業の際に、真っ先に掲げた「分かりやすい正確な医療を提供する」「できるだけ待たせない」ことのほかに、もうひとつ目指すものがあった。それは、自分の目が患者の隅々まで行き届く診療……、つまり花岡氏自身で完結する“自己完結型医療”だった。