PR

業務プロセスの見直しと現場の運用ニーズに沿ったシステム化

医事課長の永井秀樹氏

 オーダー業務のシステム化にあたっては、プロジェクトの主要メンバーで導入範囲の決定をすると同時に、各部門で立ち上げたワーキンググループで従来の伝票による指示のプロセスを棚卸しすることから作業を開始した。それまで慈圭病院では、膨大な指示伝票を利用していた。それぞれの指示記入の仕方や訂正方法など詳細にルールが決められ、運用も徹底されていた。

 それらの指示伝票の内容とプロセスを1つひとつ洗い出し、その伝票がシステムのオーダー機能にどう乗り変わるのかつぶさに検証した。その過程で、伝票起票の方法や実施後の伝票処理の仕方などが病棟の特性などで違いがあったが、それらを病院全体として標準的な業務プロセスに統一し、現状の運用に近い形でシステム化していったという。

 システム化したオーダー種は、処方/注射/処置/作業療法/デイケアなど、診療報酬の請求業務にかかわるほぼすべてのオーダー種。MEDIC EHR/Pが実装しているオーダー種の中で、精神科病院特有の隔離・拘束の行動制限オーダーは稼動させなかった。その理由を佐藤氏は、「そもそも隔離や身体拘束といった処置は法令に従うことはもちろん、患者さんの状態を熟考して細心の注意が必要です。手間暇をかけて慎重に指示・実施すべきことをシステムで標準化・簡素化すべきではないし、行動制限そのものが安易に実施してはならない処置であると考えているからです」と説明する。

 各種オーダー機能の運用で、稼動後に診療現場の要求でプロセスを変更したのが外来の処方オーダーだ。外来診察では、いったん処方指示をした後に患者が別の症状を訴えたりすることがよくあるため、処方した薬の変更・追加が発生する。その際に処方取消・再処方の操作が煩雑になる上、リアルタイムに処方情報が送信されると薬局の現場で混乱も生じかねない。そこで同院では、こうした訂正を考慮して処方確定・情報送信まで時間に2分間のバッファを設けている。これにより、処方に変更が生じたときや入力ミスなどがあった際の確認、取消・再処方作業の効率化が可能になったという。

部門・オーダー種による段階的稼動でスムーズな移行

 実際のオーダリングシステム構築・導入作業は2008年12月に始まり、翌年5月から先行部門を稼動させ、11月に全部門での稼動にこぎ着けた。プロジェクトに関わった人数は全職員の1割にあたる約40人で、「職員一丸となって病院の一大事業」(永井氏)として取り組んだ。病院の中では、全職員の半数を占める看護部に、業務変更の影響が最も大きくなる。その移行負担を軽減するために奔走したのが、看護副部長の秋山千広氏だった。

慈圭病院の導入システム適用範囲