米ラスベガスで2月20~24日に開催されたHIMSSで、Memorial Hermann Healthcare Systemが、2011年秋にクラウドベースの医用画像交換・参照システムを立ち上げた事例について解説した。Chief Information, Marketing and Planning OfficerのDavid Bradshaw氏とInformation Systems DivisionのAdministrative DirectorであるRobert Weeks氏の2人が登壇し、それぞれの専門分野に関するパートの説明を担当した。
Memorial Hermann Healthcare Systemは、テキサス州ヒューストンに本拠を置く医療関連企業・組織の複合体。米国内でIT化に積極的に取り組んでいる先進的な医療グループとして知られている。傘下に、病院15施設(急性期9施設、成育医療1施設、循環器系専門3施設、リハビリ専門2施設)、画像センター29施設、スポーツ医学・リハビリセンター25施設、検査施設25施設、外来手術施設17施設などを保有。年間患者数は約13万8000人、年間救急搬送は36万件、従業員2万人超、病床数約3600床という巨大な組織だ。
Memorial HermannのITシステムは、医療記録システムとケアマネジメントシステムをベースに、救命救急、外科手術、薬剤、放射線科、入院患者用診療記録などの基幹システムと、内視鏡診断、臓器移植、循環器系などの部門システムが統合された形態になっている。システム規模は巨大で、2つのデータセンターでメインフレームを2台、ミッドレンジのUNIX/VMSシステムを43台、1100台を超えるサーバーを運用。80カ所の拠点からアクセスできる専用ネットワークに、PCやプリンター、スキャナーなど2万8400台の端末が接続されている。
今回、同グループが運営する診療情報交換システムである「Memorial Hermann Information Exchange(MHiE)を通じて、放射線科システムで扱う医用画像交換システム(MHiE Image Gateway)を立ち上げた。DICOM Grid社のクラウドベースの医用画像交換ソリューションをベースにしており、GE HealthcareやPhilipsなどの大手ベンダーも参画している。なお同グループは、母体としてMHiE運営専門の非営利団体を設立している。MHiEは、医療画像交換・参照以外にも、診療情報や電子カルテデータ、患者の健康情報などの相互参照機能を持つ。
Weeks氏は、「日常的に画像をやり取りでき、転院の際もCDやフィルムなどメディアの搬送が不要になる。異なるプロバイダーを利用している医療機関間でも画像をシェアできるのに加えて、クラウドベースのシステムなので有事の際の事業継続にも有用だ」と説明した。
具体的には、他の医療施設からMemorial Hermannに医用画像の撮影や閲覧の依頼が来ると、撮影・検索後にMemorial Hermann側でクラウド上のMHiE Image Gatewayに画像をアップロードする。クラウド上の画像は、病院のPACSはもちろんのことクリニックや医師宅のPCのWebブラウザでも閲覧できる。また、クリニックから病院、病院から病院へ移送する患者の画像データをあらかじめMHiE Image Gatewayに上げておくことで、効率の良い医療活動につなげることも可能。救急での病院間搬送の場合には、特に威力を発揮する。
2011年末の段階で、17組織がMHiEに参加している。病院や医療機関グループのほかに、医師会のような団体や地域連携ネットワークもあるという。最近では、テキサス大学との間での画像交換・参照も開始した。