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 米国には2200万人の退役軍人がおり、彼らを対象とした専門の組織が連邦政府に存在する。それがthe Department of Veterans Affairs(VA)である。その傘下にあるVeterans Health Administration (VHA)は、152の医療センター、974の地域診療所、 98の居住施設付きリハビリセンターなどを運営する米国最大のヘルスケア組織。この組織が全国規模でRFIDとRTLS技術を導入することで、ヘルスケア関連コストを大きく減らそうとする試みが進められている。

Kimberly Brayley氏

 発表者のKimberly Brayley氏は、「標準的なRTLS(Real Time Location System)ソリューションを、メディカルセンターや診療所に導入することで、次のような効果を狙っている」と語り、詳細な内容を説明した。

 ・業務の効率化と医療ケアの品質向上
 ・業務上のコスト削減
 ・診療機器や器具の最大限の利用
 ・効率をアップして職員の生産性を向上
 ・スケジュールの遅れを減らし患者のケアを改善する
 ・器具などの紛失や置き忘れを最小限にする
 ・顧客(患者)と職員の満足度を上げる
 ・サービスの品質と安全性の向上

 具体的には、RFIDとRTLS技術を活用して、タグによる資産マネジメント、研究所の資材納入・利用管理、手術器具の平常時の在庫管理と終了後の“置き忘れ”チェック、患者の自動体温計測・治療進捗管理、職員の手洗い徹底マネジメントや施設内でのリアルタイム所在管理などを実施する。加えて、患者が実際に移動するデータを集めて、施設内の動線最適化に利用する計画もある。

 設備面では、病院など規模の大きい施設には既に導入されている無線LAN設備を利用。まだ無線LAN設備のない小規模なクリニックでは、コストや導入作業、管理面での負担が少ないZigBeeを導入するなど、実現可能性を第一に置き柔軟に対応する予定だ。

施設の状況に応じて導入する技術を柔軟に変える

 「計画は始まったばかり。現在傘下の眼科診療所1カ所で、患者の動線最適化のシミュレーションを実施している」(Brayley氏)。また最終的には、BI(ビジネス・インテリジェンス)を導入して業務フローの再検討や導入技術の効果レビュー実施も視野に入れている。今後は、12年度に5年計画の内容を確定させて、13年度に米国の医療データベースであるNational Data Repository and Analyticsとシステム連携を開始。14年度以降は、採用したアプリケーションや技術を再検討して、よりよい技術やソリューションに置き換えていくという。