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宮崎大学医学部附属病院医療情報部の山崎友義氏
宮崎大学医学部附属病院医療情報部の山崎友義氏
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名古屋記念病院総合内科の草深裕光氏
名古屋記念病院総合内科の草深裕光氏
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 診療現場に浸透してきたタブレット端末やスマートフォン。利用するデバイスの変遷が業務に相応の影響を与えつつあるが、入力画面のあり方や入力方法、実施プロセスにおける利用法などにより、業務の効率性やインシデント抑制を左右するケースもある。病院情報システムのマン・マシンインタフェースをテーマにした一般口演から、各氏の発表の概要を紹介する。

アンドロイド端末で現場業務が大幅に時間短縮

 宮崎大学医学部附属病院医療情報部の山崎友義氏は、「アンドロイド端末運用における電子カルテ入力業務負担軽減効果の検討」について発表した。同病院は2006年5月に250台の業務用PDA(Pocket@i EX、NECフロンティア)を導入し、ベッドサイドでのバーコード患者認証、バイタルサインなどの観察項目入力、注射・輸血の実施入力を目的に運用してきた。その後2011年5月に、電子カルテの更新と同時に、業務用PDAから市販のアンドロイド端末(GALAXY S、サムスン電子製)へと運用を切り替えた。

 アンドロイド端末向けのシステムである「WATATUMI」は、電子カルテシステム「IZANAMI」、データベースのCachéとつながっている。WATATUMIで稼動する当初の業務アプリケーションは、主に患者認証、バイタルサイン入力、オーダー実施入力など。2012年4月から医師にもアンドロイド端末を配布・運用する予定で、画像参照、検査履歴参照、コミュニケーション機能、注射等の記録におけるダブルチェック機能などを順次、開発・追加している。

 ベッドサイドでの入力業務の負担軽減効果については、電子カルテシステム更新前の1カ月間(2011年4月1日~30日)で、従来の業務用PDAとアンドロイド端末を併行利用する形式で検証した。量的調査として、同一入力者による患者認証、基本バイタル入力、点滴実施入力など32例で、タイムスタディ調査とアンケート調査(48人)を実施。同時に質的調査として、タイムスタディ調査に協力した8人の看護師へのインタビューも実施した。

 量的調査の結果は、アンドロイド端末による入力時間はPDAと比べて、患者認証で平均0.9秒、観察項目で1項目当たり同0.9秒、点滴実施入力で同2.2秒の短縮効果がみられた。「アンドロイド端末の運用開始1週間後の調査だったので、まだ操作に習熟していない期間。それにもかかわらず、このような短縮効果が得られた。習熟度が増せば効果はさらに大きくなると想定できる」(山崎氏)という。アンケート調査では、携帯性、操作性、視認性が良好であるという評価を得た。

 質的調査では、片手入力が可能であること、アンドロイド端末のアプリである計算機や時計機能が利用できる点が、利点として挙げられた。「従来は、点滴速度の計算のためにストップウォッチと電卓を持参していたが、アンドロイド端末だけで済むようになった」(山崎氏)

 最後に考察として、「Webアプリでなく、アンドロイド端末のネイティブアプリで実行していること、バーコード読み取りを赤外線照射でなくカメラ機能で行うことなどにより、認証と画面展開が速くあり、入力時間の短縮や操作性向上につながった。アンドロイドOSは、アプリの開発、管理、変更の自由度がiPhone系より容易で、医事管理コストの軽減が見込める。PDAの3分の1の価格で購入でき、医師全員への配布も可能になった」と述べた。