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医療機関のBCPを討議したシンポジウム
医療機関のBCPを討議したシンポジウム
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 次に講演した国立成育医療研究センター情報管理部の山野辺裕二氏は、災害時の電源対策として同センターが備えているディーゼル自家発電機、ガスコージェネレーション発電機などの仕組みを解説。また、関東地区で実施された計画停電などから、節電対策として電子カルテ端末の省電力設定を有効化する実証実験の内容と効果を解説した。

 山野辺氏はさらに、災害時に病院情報システム(HIS)が機能不全に陥ったときを想定し、「代替HIS」を準備していくことの必要性にも言及した。同センターは、2008年3月のHIS更新時のシステム停止期間に記録や伝達をWordやExcel、ファイルサーバー、メールシステムでまかなった経験がある。「それを発展させれば、災害時の代替HISとして運用可能だ」(山野辺氏)。

 具体的には、ファイルサーバーに患者ごとのフォルダを作成して、WordやExcelによる診療記事やオーダー伝票などをフォルダ単位で管理し、可能なら部署ごとにメールでオーダーを飛ばす仕組みだ。記録や伝票は印刷して原本保管し、システム復旧後に追記する。「災害のレベルによっては、実際の運用に耐えうるかどうか疑問はある。しかし、緻密な運用計画と検証を行い、災害時に備えておくことが大切」(山野辺氏)と語った。

BCP策定には柔軟性と粘り強さが欠かせない

 東京医科大学病院医療情報室課長の成清哲也氏は、東日本大震災以前は、直下型地震による電力供給停止状態で3日間程度の医療継続を想定して、電源対策を策定していたと説明した。震災後は、計画停電の実施に対して、(1)停電指定時間帯の業務の縮退、(2)停電開始後の体制、(3)復電後の業務再開の3つのフェーズで計画を立てたたものの、その後に政府や東京電力の方針変更から計画の見直しに苦慮したという。

 そうした点を踏まえて成清氏は、「BCP策定は、さまざまなシナリオを想定して計画を立てようとすると、非常に複雑なものになる。シナリオを限定して完全性を求めると、逆に硬直化してしまう危険性がある。BCP策定には柔軟性と粘り強さが必要。柔軟性はまずインフラを可視化することが大切で、粘り強さは現場力を活かして想定外のことを想定内に収めていく力が重要になる」と指摘した。

 一方、NEC医療ソリューション事業部大学病院ソリューション部長の松尾茂氏は、システムベンダーの立場から、BCPがどうあるべきか具体的な事例を挙げながら解説した。NEC自身も東日本大震災で事業所が被害を受けたことに触れ、「BCPはどこまで策定し、どう周知するかが、いかに大切か学んだ。また、業務フローや運用フローを関係者がきちんと認識していることが復旧を早める」と述べた。

 有事に備えたシステムを構築している実例として、浜松医科大学の自然災害・ネットワーク障害対策ソリューションを紹介。そのポイントは、?有事に際して最低限必要な情報参照を確保すること、?普段から慣れ親しんだ操作で非常時にも同様な操作で運用できること、?比較的安価で構築できること、だと指摘した。

 具体的には、電子カルテ情報を画像化して災害時バックアップサーバーに保管するのに加えて、SS-MIX標準化ストレージの情報(処方、検査結果などの情報)、放射線画像を同様に保存する。それを毎日1回PCに送信し、可搬型ディスクにコピーして保持しておく仕組みだ。セキュリティを担保するため、可搬ディスクはしっかりと入退室管理を実施するマシン室に保管。災害時は、可搬ディスクとノートPCをセットで診療現場に配布する。

 松尾氏はこのほか、診療情報を預金通帳のような形態に毎診察時、印刷・記録して患者が保管することで診療の継続性を確保する方法、同じシステム・バージョンの電子カルテシステムを運用する病院間で相互にバックアップデータを持ち合ってデータ保護する方法、SaaS型電子カルテの災害対策利用、などについて解説した。