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 対象者70人に対して看護師が1人、栄養士と運動専門士はそれぞれ250人に対して1人の割合で配置している。対象者は実験開始から3カ月間は毎月3回、各30分間、看護師とオンラインで面談する。4カ月目からは毎月1回の面談となる。定期的な面談だけでなく、計測結果に異常があった場合も看護師がオンラインで面接する。対象者が使うPCに異常値のアラートを表示すると同時に、センターのPCにもアラートが出る。それを受けて、看護師が対象者に連絡する。看護師の判断で、医師との連携もできる仕組みだ。

スマートケアセンターで、看護師が実際に患者と話をしているところ。糖尿病患者の女性で、「蕁麻疹ができたため皮膚科に行ったところステロイド剤を投薬されたが、糖尿病の自分がそのまま薬を使っても大丈夫か」という質問をしていた。
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看護師が使うPCの画面に、患者の計測値が表示されたところ。
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 スマートケア実証実験の主な目的は、大規模な臨床試験によるスマートケアの有効性検証にある。従来は、医療サービスと健康関連のサービスは、それぞれ独立して検証していた。テグ市が取り組むスマートケア実証実験では、この2つのサービスを合わせて導入、その効果を検証しているところが新しい。「法律による制限もあって、医療と健康サービスを同時に実施することが難しい。今回のような実証実験を通して、相互のサービスをうまく活用することで、医療にも健康にも効果があることも示したい」(テグ市のホン氏)という。現在、臨床実験に参加しているのは約4000人のテグ市民。その効果は、既に確認できつつあるという。

半年の検証で86%が「適切に計測」、63%が「効果あり」

 「実は、もう効果が出始めている」と語るのは、LGエレクトロニクスのリー氏。2011年1月から7月までの半年間、糖尿病や高血圧、肥満などの慢性疾患患者92人を対象に遠隔診療や健康相談などの実証実験を実施。その結果、「対象者の86%が正確に検査や報告を行い、全体の63%が「効果あり」と判定できた」(同氏)。例えば、高血圧では最高血圧が21mmHg、最低血圧が3mmHg下がった、糖尿病では空腹時血糖が35mg/dl下がった、肥満の患者は平均2.7kg体重が減少した、といった効果があったという。実験自体への評価も高く、59%が「満足」、30%が「普通」としている。

実証実験に協力する慶北大学校・医科大学内科学教室のイ・インギュ教授。

 実証実験に協力する大学病院の医師も、その効果を認める。慶北大学校・医科大学内科学教室のイ・インギュ教授はこう語る。「病院で検査、計測するのは回数が限られる。高血圧や糖尿病といった慢性疾患の場合、日々の数値管理が大事。ただ、患者が漫然と自宅で毎日計測しても、あまり効果はない。今回の遠隔診療、健康指導は、病院に来ることなく、毎日手軽に血圧などを計測し、そのデータを患者の作業負担なく病院や健康相談所などに届けることができる。病院で緊張しながら計測するのと、自宅で日常作業として気楽に計測するのでは、計測結果も違ってくる。その違いを医師が把握できることも大きい」。

実証実験に協力する嶺南大学 循環器内科のシン・ドング教授。

 ただ、実際に医療現場でフル活用できるようになるには課題も多い。嶺南大学 循環器内科のシン・ドング教授は、「まず、法律の整備が必要。遠隔診療を医療行為として行えば、当然、医師としての責任が問われる。報酬の基準も必要になる。実証実験に参加してみて、遠隔地の患者の顔を見ながら話をして、最新データも参照できることのメリットは大きいと感じた。しかし、ディスプレイに映し出されている顔色が本当の色なのか不安は残る。また、医師はデータや会話だけでなく、患者の体から発せられる様々な事象を感じ取って、判断する。患者本人が医師の目の前に座っていないことで、この感覚を得にくくなるのも不安だ」。