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計測方法は今後も開発、情報の安全性も課題

 導入する計測機器は今後、さらに増やす予定。現在、自宅で計測しているのは血糖値、血圧、体脂肪、酸素飽和度、心電図。今後、さらに計測対象を増やす予定。「日常生活の活動量測定などが必要という指摘がある。計測機器を増やし、患者や医師の必要に応じて選択できるようにする」(テグ市のホン氏)。

歩数計を開発するnetBlueのキム・ハックビョンCEO。

 その1つが歩数計だ。テグ市に本社を構える医療関係の機器、ソフトウエア開発会社netBlueがコンソーシアムに参加して開発している。年齢や身長、歩幅などの基礎データを設定しておくと、歩数だけでなく運動量も表示、記録するというもの。計測データをBluetoothでPCなどに転送できるのが特徴だ。「機能としては満足できるレベルに達している。本体のデザインやサイズは、まだ課題を残している。毎日使うものなので、できるだけ小型にする予定」と、netBlueのキム・ハック・ビョソCEOは言う。

開発中の歩数計。必要な機能を装備したところサイズが大きめになった。女性でも使いやすい大きさ、デザインを目指すという。
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ネットワークの開発を担当する、慶北大学校IT大学電子工学部のパク・ジョンテ教授。

 遠隔健康管理を普遍的なサービスとして展開するためには、病院の電子カルテを個人の健康記録(ヘルスレコード)として扱えるようにする必要がある。テグ市のホン氏は、「スマートケアで測定したデータは、医療情報として病院の記録と統合管理するよう発展させたい。そのためには、医療情報の標準化や互換性といった課題が残る」と言う。

 個人情報の保護、データ送信の安全性もより確実なものにする必要がある。ユビキタスヘルスケア全般のネットワーク開発を担当する慶北大学校IT大学電子工学部のパク・ジョンテ教授はこう語る。「ネットワークのセキュリティは高くしつつ、端末側の操作は容易にというニーズに応えなくてはならない。博士4人を含む専門チームを作って、開発を進めている」。

「医師との対話」で大学病院の理解を得る

慶北大学校・医科大学附属病院の院内。診察室の入り口に、実証実験参加者を募る告知を掲示(右下にあるポスター)。年齢制限や症状による制限など詳細を説明してある。
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 テグ市のホン氏は、実証実験開始から1年間を振り返り、「すべては医師会との対話から始まった」と語る。当初、遠隔医療サービス導入にテグ市の医師会は反対だった。医療法で認められていない、安全性の担保が困難、診療所の経営への悪影響などがその理由だ。

 ただ、産業界からスマートケアをはじめとするヘルスケア事業の育成、発展を求める声は強く、高齢化社会での医療費抑制への有効な手段であることも間違いない。「各界の意見を集めたり、法整備を進めたりして、まずは大学病院の理解を得るように努力した」(ホン氏)。さらに、「臨床実験を進める大学病院の研究開発をテグ市が支援するといった協力関係の強化も進めた」(同)と言う。

 3年計画の後半に入る2012年に向けて、さらに実証実験対象者を増やす。韓国では、こういった臨床実験には、患者などの対象者が自発的に参加の意思表示をする必要がある。大学病院の診察室前などに告知を張り、参加者を募っている。「参加希望者は多く、実験は順調。ただ、順調なだけでは実験結果として満足できない。対応するのは時間も労力もかかるだろうが、いかにたくさんの課題を見つけ、解決するかにスマートケア導入の成否はかかっている」と、ホン氏は語る。

 自治体が、常に「ビジネス化」を考えて実証実験を進める。これに企業が魅力を感じるのは当然のことだ。積極化した企業が大学病院などの医療現場から丁寧に情報を集め、医療・健康の現場のニーズを拾い集め、システムに反映する。こういったアライアンスを作れることが、自治体主導で実証実験を行う最大のメリットといえる。