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プランテックコンサルティングの森永一郎氏(右)とクオリクスの稲本淳平氏(左)
プランテックコンサルティングの森永一郎氏(右)とクオリクスの稲本淳平氏(左)
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 第30回医療情報学連合大会でインテルが共催したランチョンセミナーでは、「施設管理にITを活用した、病院における省エネ対策」と題して、プランテックグループの2社が講演した。プランテックコンサルティング代表取締役 森永一郎氏とクオリクス代表取締役社長 稲本淳平氏は、病院の経営体質強化に向けた施設管理の重要性を説くと同時に、ファシリティマネジメントソフトを使った病院施設管理の実例を紹介した。

効率的な施設管理を実現できるファシリティマネジメント支援ソフト

 セミナーの冒頭でプランテックコンサルティングの森永氏は、病院が省エネルギーを考えるべき背景として、組織の社会的責任(CSR)の観点や東京都の環境確保条例など法的規制への対応といった外部要因と、病院は他の施設と比較してエネルギーコストが高く、その削減は病院経営に大きな影響を及ぼすという内部要因を挙げた。

 病院施設の単位面積あたりの年間エネルギーコストは、24時間施設であること、多くの医療機器の電力消費量が多いことなどが原因で、一般事務所の約2倍でショッピングセンターに匹敵する。また、病院の建設から解体までのコスト試算で見ると、エネルギーコストは建設時のイニシャルコストの約5割を占め、それに修繕・更新・保全費などを加えたランニングコストは全体の約55%に達するという。

「エネルギーコストを含む運用費をいかに圧縮するかが、病院の経営に大きく関わってくる。運営を改善していくためには、ソフトとハード両面を一元化することが重要であり、適切に運営管理を行うことができる『Chief Facilities Officer』を置くべき」(森永氏)と指摘した。

 森永氏は病院の施設運営における課題として、医療機器などのメンテナンス履歴が管理されていない、消耗品の在庫管理が徹底されていない、法定点検機器の管理ができていない、電源や各種設備の管理が不十分、運用管理に関するドキュメントの管理・共有がなされていないといった例を挙げ、それが目に見えないコストを発生させていると述べた。続けて、これらの課題はITを活用した情報管理を適切に行うことによって改善できると主張。グループ会社のクオリクスと共同開発した、ファシリティマネジメント支援ソフト「ObjectSCOPE」を紹介した。

 「開発の発端は、建築設計データを施設運営に活用することができないかと考えたこと。病院などの大規模施設管理では、管理に関わる情報の膨大化、その情報の散在化に加え、各種設備の更新履歴を取り切れずに棚上げされていることが大きな課題となっている。これを解決するために開発したのがObjectSCOPEで、施設内の多種多様で膨大な設備や機器情報、修理・保守情報などを統合し、CAD図面や組織上のロケーションとリンクさせて施設管理を効率化・効果的な施設管理を行うことができる」(森永氏)。

管理対象情報とCAD図面をリンクしてロケーション表示

 ObjectSCOPEは、機器・備品台帳、作業報告書、資産台帳などExcelなどで管理されている情報を読み込んでデータベース化し、CAD図面データとリンケージすることにより、各種台帳と図面で管理情報およびロケーションを統合管理する。管理対象ビューにはExcelなどから読み込んだ医療機器や各種設備の情報がツリー形式(階層構造)で表示され、それぞれの管理対象の情報とイメージビューのCAD図面とリンクしてロケーションを表示。また、カルテビューには指定した管理対象の詳細な属性がリンクして表示される。また、リンク作業は手作業ではなく自動的に行われる。

 「管理対象の情報とロケーションを合わせて管理することで、場当たり的なメンテナンスではなく、予防保全が可能になる。計画的なメンテナンスによるコスト削減や現場スタッフの安心・安全にも寄与する。また、消耗品などの在庫管理を同時に行えば、近接する部門との重複購買を避けられるのに加えて、集中購買によるコストダウンも期待できる」(稲本氏)と、ObjectSCOPEの有用性を述べた。

 この他にも稲本氏は、法定点検機器の管理や電源・各種ユーティリティ管理、医療機器のマニュアルや関連書類などドキュメントの電子化・共有方法なども解説した。また、病院での導入事例として成育医療研究センターを紹介。集計機能を使ったフロアごとの設備機器の消費電力管理や、時系列で見た電力消費傾向などのオペレーションの実例を説明した。