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2012年度診療報酬改定の内容が決定した。前回に引き続きプラス改定となった今改定は、政府の「社会保障・税一体改革」の方針にのっとり、医療機関の機能分化と連携を強力に推進。機能を充実させ、「実績」を上げている施設を重点評価する内容となった。医療機関への影響が大きい主な改定項目を紹介する。


全体動向
改定を読み解く四つのキーワード 機能拡充と効率化を強力に推進

2月10日、藤田一枝厚労政務官に答申書を手渡す森田朗中医協会長

 厚生労働省の中央社会保険医療協議会は2月10日、2012年度診療報酬改定案を承認し、小宮山洋子厚生労働相に答申した。

 かろうじて全体で0.004%のプラスとなった今改定では、医科本体の引き上げ分に4700億円の財源を充当。そのうち医療従事者の負担軽減に1200億円、医療機関の機能分化や在宅医療の充実に1500億円、がんや認知症治療など重点分野に2000億円を配分した。

 改定項目を俯瞰(ふかん)すると、今改定を特徴づける四つのキーワードが浮かび上がってくる(表1)。

表1◎2012年度診療報酬改定の四つのキーワード
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 一つ目は「機能分化と連携」。政府が今年2月に閣議決定した「社会保障・税一体改革大綱」には、2025年に「あるべき姿」を実現させるため、医療機関の機能分化を一層進めることが明記されている。具体的には、現在約107万床ある一般病床を高度急性期、一般急性期、亜急性期病床に振り分け、高度急性期に医療資源を重点配分。一方で、急性期、慢性期、在宅医療の連携を強化して患者に過不足のない医療を提供する絵姿を示しており、今改定はその「2025年モデル」を強く志向した内容になった。

 例えば、急性期入院では7対1一般病棟入院基本料の算定要件が厳格化されるが、これは高度急性期医療の担い手を絞り込み、医療資源を重点投入する姿勢の表れといえる。同時に、退院患者の受け皿となる在宅医療の評価を充実させたり、連携を推進するため医療機関の退院調整に関する点数項目を数多く新設・拡充するなど、様々な仕掛けを盛り込んだ。

 二つ目のキーワードは「医療従事者の負担軽減」だ。急性期機能の強化には勤務医の負担軽減が不可欠であるため、診療体制の効率化を誘導。病棟薬剤師の配置などチーム医療の推進に向けた取り組みを評価したり、勤務医の負担軽減を要件とする項目を拡充した。

 三つ目に、現状で医療資源が足りない部分を補うため、特定の診療科や治療法を重点的に評価。特に手厚く評価したのは、救急、小児・周産期、精神科(認知症医療)、がん・緩和医療の4領域だ。これらの領域は、患者の数に比べてサービスの供給が不足していることから、効率的な医療を提供するため、特に連携に対する評価を引き上げた。

 四つ目は患者の視点の重視だ。患者相談窓口を設置し、専任の看護師や社会福祉士が対応に当たる体制を評価する、入院基本料などへの「患者サポート体制充実加算」(70点)を新設。2014年から400床以上の病院には例外なく明細書発行を義務づけるなど、明細書無料発行の推進策も盛り込んだ。

 診療報酬改定を読み解く際は、個別の点数に一喜一憂するのではなく、改定内容から浮かび上がる「必要とされる医療機関像」のトレンドをつかむことが大切だ。次ページからは、各分野の主な報酬項目を紹介する。