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河本病院を経営してきた医療法人浄風会は、2011年5月に破産開始決定を受けた。裁判所の許可により、診療は継続されている

 「河本病院および介護老人保健施設信愛苑に入院・通院・入居されている皆さまへ」──。

 2011年11月2日、取材に訪れた医療法人浄風会河本病院(岡山県真庭市)の入り口には、患者らに向けた河本英世理事長名の「大切なお知らせ」が貼ってあった。文面には、2011年5月20日に岡山地方裁判所津山支部に破産開始の申し立てを行ったこと、同時に裁判所が特別に事業の継続を許可したこと、そのためこれまでと変わりなく医療・介護サービスが受けられることなどが記されていた。

 河本病院(148床)を経営する浄風会は、2011年5月30日に破産開始決定を受けた。負債額は約12億円。同年3月31日時点の負債の合計が12億7300万円余りなのに、資産の合計は5億4800万円ほどしかなく、7億円を超える大幅な債務超過に陥っていた。

行き場のない患者の受け皿

 河本病院は、一般病床(93床、うち実稼働59床)のほか、療養病床35床(医療保険適用29床、介護保険適用6床)と結核病床20床を持つ地域密着型の病院。呼吸器専門の診療所としてスタートしてから、50年を超える歴史を持つ。

 末期状態で認知症もあるといった、行き場のない患者を積極的に受け入れる病院として、地域医療の一角を担ってきた。結核病棟は、所属する真庭保健医療圏で唯一の施設。胸部健診用のX線健診車も保有し、住民健診にも取り組んでいた。併設する老健施設・信愛苑は、入所定員30人で通所定員10人。規模こそ小さいが、1991年にいち早くオープンした施設だ。

 河本病院のある真庭市は、岡山県北部の山間にあるひなびた地方都市。しかし、真庭保健医療圏は、一般・療養を合わせた基準病床数628床に対し、既存病床数が810床を数える病床過剰圏(2010年4月時点)。2年前には、河本病院をはじめ、七つの中小病院が救急告示を受けており、急性期型の病院同士の競合は激しかった。

 2002年に民間の3病院の院長による月例の情報交換会が発足し、役割分担と連携に向けた話し合いを続けてきたのも、共倒れを防ぐのが目的の一つだった。医療法人緑壮会・金田病院、医療法人井口会・落合病院に加え、河本病院もそのメンバーだった。

 ところが、2010年4月にこの会合が連携推進協議会に発展した際には、河本病院はメンバーに名を連ねてはいない。浄風会の業績は、2009年度から急激に悪化しており、連携に取り組む余裕はなくなっていたのだろう。