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書類の提出を怠るケースも

 だが、こうした実情を知る金融や信用調査の関係者でも、「3年分の決算書を眺めれば、ある程度の実態は把握できる」と指摘する人は少なくない。「調査報告書には、必ず3年分の決算書を添える。決算書を粉飾する場合も、大抵は実際の経営数字をいじって行うから、何年分かの決算書を調べれば経営の実態がある程度見えてくる」と、大手信用調査機関の情報担当者は話す。

 先にも述べたように、医療法人の決算書類などの開示は、2007年度決算から始まった。既に、2010年度決算までの4期分の損益計算書や貸借対照表が、提出・開示の対象となっている医療法人もかなりある。

 今年に入って、「倒産」としてカウントされる破産や民事再生を申し立てた医療法人の中には、決算書を全く提出していなかったり、最終年度分の提出前に事業停止に追い込まれたりして、4期分がそろっていない法人も少なくない。

 ただし、2期分、3期分の経営データを入手できた医療法人も幾つかあった。次回は、今年破産に追い込まれた医療法人の事例を取り上げ、決算書の数字を中心に破たんに至った経緯を分析する。

2011年の医療機関倒産は例年並み
目立つ産婦人科と都心診療所の破たん

 民間の信用調査機関、(株)東京商工リサーチによれば、2011年1~10月の医療機関(歯科を含む)の倒産は30件。2010年の同時期より6件少ない。年間59件を数えた2009年の約半分で、例年並みのペースだ(図2)。負債総額は134億円で、前年同時期の328億円の半分以下にとどまる。

図2◎最近の医療機関の倒産件数と負債総額
※東京商工リサーチによる。2011年は10月までの倒産件数および負債総額

 同社経済研究室では、「医療機関の倒産は2009年以降、上向いてくるのではないかとみていたが、そうはならなかった」と話す。返済条件の緩和を金融機関の努力義務とした中小企業金融円滑化法の効果がまだ残っていることや、東日本大震災の発生で関連倒産が危惧される中、金融機関が強硬な債権回収に乗り出しにくくなったことなどが、その要因として考えられる。

今年2月に破産手続き開始の決定を受けた医療法人二葉会が経営していたたんぽぽクリニック堀口産婦人科(長野県松川村)

 倒産事例の中では、産婦人科の病院や診療所が目立った。長野県松川村で、たんぽぽクリニック堀口産婦人科を経営していた医療法人二葉会もその一つ。約1億5000万円(2010年4月末)の負債を抱えて、2月に破産に追い込まれた。2008年4月期に9228万円あった事業収益は、7775万円、6026万円と年々減少しており、本業不振型の倒産とみられる。

 新宿や銀座など東京都心部の繁華街で、テナント診療所を経営する医療法人の破産も目についた。その中には、丸の内で皮膚科や美容外科の診療所を経営していた医療法人フィール・ファイン・クリニックのように、グループ企業の破たんに連鎖して債権者に破産を申し立てられた例もある。