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 10年ぶりに診療報酬全体(ネット)でのプラス改定が実現した2010年度改定からもうすぐ2年。次期改定に向け、多くの医療関係者は2期連続のプラス改定を渇望していることだろう。だが、現実は厳しい情勢にある。

強まる歳出削減圧力

 前回の改定は、まだ政権交代の熱が冷めやらぬ中で行われた。診療報酬の増額は、民主党が「医療崩壊」を食い止めるとして掲げた政権公約。改定率はネットでプラス0.19%と小幅にとどまったが、自公政権の下で4回続いた引き下げ策の転換は、政権交代の象徴でもあった(図1)。

図1◎診療報酬改定率の推移

 以来、時は経過し、次期改定は政権交代後3人目の総理大臣となった野田佳彦首相の下で迎えることになる。

 次期改定に関し、当時財務相だった野田首相は、民主党代表選前に「基本的にマイナスはないだろう」と発言。小宮山洋子厚生労働相も、「改定率は少しでも上積みしたい」とプラス改定に意欲を見せる。

 野田首相がマイナス改定回避を示唆する発言を口にしたのは確かだが、だからといってプラス改定が保証されているわけでは決してない。むしろ、ここへ来てプラス改定実現への道のりはかなり険しくなりつつある。

 改定率は年末にかけての政府の予算編成過程で決定するが、2012年度予算の概算要求では各省庁の要求総額が99兆円規模に達し、過去最大を更新した。財政規律の維持が課題となる中、これから2兆円以上を削り込む必要がある。

 次期改定に伴う国費負担分の増減の扱いは、概算要求上は数字を示さない「事項要求」となっており、最終的に財務省と厚生労働省との調整で決まる。ただし、社会保障給付費に関しては、民主党政権が1兆1600億円に上る自然増すべての予算計上を認めているだけに、財務省内には診療報酬単価まで上げることへの抵抗感がこれまで以上に強い。賃金や物価が明らかな下落傾向を示す中、「診療報酬引き上げの環境にはない」というのが同省のスタンスだ。