厚生労働省が9月30日に公表した「2011年介護事業経営実態調査」(速報値)の結果から、介護事業者の経営状況が2008年の前回調査に比べ軒並み改善していることが明らかになった。2009年度の介護報酬のプラス改定(3%)の効果が表れた結果とみられる。今回の調査は、2012年度介護報酬改定の際に各サービスの報酬を検討するための基礎データとして活用される。
同調査では2011年4月に、約3万施設・事業所を対象に調査票を配布。2011年3月の経営状況を尋ね、約1万施設・事業所から回答を得た。有効回答率は36.1%。東日本大震災の影響を踏まえ、青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県の介護施設・事業所は調査の対象外とした。
サービス別の収支差率は表1の通り。居宅介護支援を除く全サービスが黒字となったほか、前回調査と比べて大半のサービスで収支差率が改善した。

最も収支差率が高かったのは通所介護で11.6%。それに、介護老人保健施設(9.9%)、介護療養病床(9.7%)、特別養護老人ホーム(9.3%)、グループホーム(8.4%)が続く。居宅介護支援の収支差率は、2008年のマイナス17.0%から14.4ポイント改善したが、マイナス2.6%で黒字化には至らなかった。このほか収支差率が低かったのは訪問看護(2.3%)、特定施設(3.5%)など。グループホーム、訪問看護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、特定施設の収支差率は前回調査と比べて0.4~1.4ポイント悪化した。
この結果に関して、10月7日の社会保障審議会・介護給付費分科会では一部の委員から「調査結果には法人税などが反映されておらず、データとして不十分」との声が上がり、厚労省は10月17日の同分科会で法人税などを差し引いた後の収支差率を公表。これを見ると、介護保険3施設では法人税がかからない特養が9.3%でトップとなり、老健施設が8.6%、介護療養病床が5.5%となっている。