市町村に大きな役割

信夫 今回成立した「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(農山漁村再生可能エネルギー法)の仕組みの中心になるのは、市町村が作成する「基本計画」である(図1)。この基本計画の作成や実施を通じて、市町村に大きな役割を担ってもらう。

図1●「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」の仕組み
中心となる「基本計画」の作成や実施を通じて、市町村が大きな役割を担う(出所:農林水産省)
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 具体的には、国が定める「基本方針」に沿った形で、市町村が基本計画を立てる。その市町村に、農林漁業と調和した再生可能エネルギーの導入を、どのように進めていくのかという方針を示してもらうことが、第1のポイントである。

 第2のポイントは、その基本計画において、再生可能エネルギーによる発電設備の整備を促進する区域を決めること。現在は、地権者と発電事業者のみで話を進め、計画が明らかになってはじめて市町村や周辺住民などが事業の存在を知るケースが多く、中には、生活環境に支障が生ずるおそれがあるとして反発を招くケースもある。市町村が、関係者の理解も得て、あらかじめ発電設備を整備する土地や水域を適切に設定しておくことで、こうした混乱を防ぐことができるだろう。

 第3のポイントは、農林漁業の健全な発展に資する取り組みについて、基本計画に定めること。発電設備の整備を行おうとする事業者に、発電事業の収益の一部を活用するなどしてこれを実施してもらう。

 これらの内容を市町村が決めるにも、どこにどのようなニーズがあるのかを把握するのは難しい。そこで、農山漁村再生可能エネルギー法では、地域の関係者や発電事業者などとの密接な連携のもとに進められるように、協議会を設置できることを定めた。

 協議会は、市町村が主催し、農林漁業関係者やその団体、発電設備を整備しようとする事業者、関係住民、学識経験者などで構成する。基本計画の方針や発電設備を整備する区域、農林漁業の健全な発展に資する取り組みについて協議する場となる。市町村は、協議会での協議結果を踏まえ、基本計画を作成する。

 こうしたプロセスによって、その地域で農業に活用されておらず、その見込みもない土地に発電システムを誘致することも可能になる。また、発電事業者にとって、農林漁業の知見を得ながら、農林漁業の健全な発展に資する取り組みを行うことができる。このような仕組みにより、再生可能エネルギー事業と農林漁業の両方が効果的に伸ばせるだろう。

――発電事業者は、異なる時期に個別に事業を検討している。基本計画はその都度、作成することになるのか。

信夫 基本計画は、各市町村に1つ。発電設備を整備する区域を追加するなど、当初の基本計画の変更で対応する。