第1種農地も条件次第で転用可能に

農林水産省 食料産業局 再生可能エネルギーグループの信夫隆生グループ長
(撮影:清水 盟貴)

――今後は、すべてこの仕組みを使うことになるのか。

信夫 この法律によらず、従来どおりの手続きを進める道も引き続きある。例えば、屋根の上に太陽光発電システムを置くのに、この制度を使う必要性は薄い。

――今回の法律の手順を使えば、耕作放棄地にメガソーラーを作ろうとした場合、農地転用などの壁が低くなるのか。

信夫 今回の法律の施行と同時に、農地法の省令の見直しを予定している。

 現在、市町村が設定する農振農用区域内の農地と、これ以外の区域の農地であって、集団農地であったり、土地改良事業の対象だったりした農地(第1種農地)は、転用が認められていない(図2)。これら以外の農地、すなわち、小集団の生産力が低い農地である第2種農地や、市街地にある農地である第3種農地はもともと転用可能である。

図2●現在の農地転用許可制度の概要
市町村が設定する農振農用区域内の農地や第1種農地は、転用が認められていない(出所:農林水産省)
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 一方、農業上の再生利用が困難な荒廃農地の約13万ヘクタールの中にも、第1種農地が含まれている。これを再生可能エネルギー発電事業に有効利用するため、農山漁村再生可能エネルギー法の運用上、市町村が定める基本計画に、第1種農地であっても、このような荒廃農地であれば、発電設備を整備する区域に含むことを可能にする予定である。

 また、荒廃農地のうち、再生利用が可能な荒廃農地に分類される第1種農地であっても、生産条件が不利で、引き受け手が見込まれないような土地は、同様に区域に含められるようにする予定である。

 その上で、農地法の省令を見直し、これらの荒廃農地については、一定の条件の下で、転用が認められるように見直す予定である(図3)。

図3●荒廃農地に含まれる第1種農地を転用可能にするように省令を見直す
(出所:農林水産省)
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 また、風力発電については、足下の台座に必要な面積が小さい、風力発電に適する風況が良い場所は限られるなどの事情があることから、現在耕作が行われている第1種農地であっても設置を認める方向である。

――今回の法律の施行の時期は。

信夫 この法律は、2013年11月22日に公布されたが、公布の日から6カ月以内、すなわち5月21日までに施行する必要がある。具体的な施行期日は未定だが、できるだけ早く施行するため、準備を進めているところである。農地法の省令も、この法律の施行に合わせて改正される見込みである。