機能・プロセスごとにモジュール化して開発
BISのシステム的な大きな特徴は、機能、プロセスごとにモジュール単位で開発し、それぞれを組み合わせて構築した点だ。現時点のシステムでは、(1) 検体管理モジュール、(2) 匿名化モジュール、(3) 同意書モジュール、(4) ReTKPortlモジュールの4つが実装されている。
検体管理モジュールは、患者(提供者)から採取した検体を管理するためのモジュールで、生体試料の種別(血清、血漿、DNA、組織、病理標本など)と場所情報を管理する。ピットに入れた生体試料の場所管理は、ピットを収めるグリッド状に区切られた箱、その箱を複数まとめた保存ケース、冷凍保存するためのフリーザーあるいは液体窒素保存タンク、それが置かれた部屋および棟の情報が記録されている。
また、検体から血清や血漿などに分注する処理や依頼のあった研究者に生体試料を分け与える分譲処理の作業をナビゲーションする機能も実装されている。
分注した生体試料をフリーザーや液体窒素保存タンクに保存する際に、各部屋に常備したiPadに場所情報を入力しながら作業する。グリッド状に区分けされたピット保存箱が画面上にマトリクスとして表示され、画面タッチで格納位置を指定する。ピットによっては縦横2グリッドといった使い方で保存する場合もあるが、それに合わせて画面上のマトリクスも現場で自在に変更できる仕様になっている。
匿名化モジュールは、臨床情報と検体情報をひも付ける際に、病院情報システム(電子カルテ)の患者の個人情報を匿名化するための機能で、患者IDをリソース番号(生体試料管理番号)に変換するモジュール。
生体試料にひも付いた臨床情報は、検体採取日や手術日などによって患者を同定できる可能性があるが、個人情報(氏名や住所など)を第三者が容易に結びつけることができない仕組みにしている。しかし、分譲を受けた研究者から臨床情報の追加請求があった場合には、再び電子カルテの臨床情報に戻ってデータ取得する必要がある。
「こうした要件に対応するため、バイオバンク事業では“連結可能な匿名化”と表現する一見矛盾する条件で管理する必要があります。そこで、匿名化モジュールを病院情報ネットワークと研究棟のBISネットワークの中間(隔離されたDMZネットワーク上)に配置し、病院側からはリソース番号が、バイオバンク側のスタッフからは患者IDが認識できない仕組みにしています」(渡辺氏)と、見かけ上は完全に匿名化している仕組みを説明する。
一方、同意書モジュールは、患者から生体試料提供の意思確認を得た際の同意情報を管理する仕組み。生体試料提供の同意はコーディネーターが患者に説明したうえで取得するため、同モジュールは病院情報ネットワーク側に置かれている。また、コーディネーターによる同意処理が患者の臨床情報を取得するためのトリガーとなっており、その機能も同意書モジュールが担っている。
実際の同意取得業務においては、現在開発中の最新バージョンでは意思確認文書をiPadにダウンロードし、患者に対面で説明のうえオフラインで同意処理を行い、後にネットワークにリンクさせる仕組みを組み込んでいる。
4つめのReTKPortlモジュールは、BISの検体管理モジュールが電子カルテ側からデータ取得するためのインタフェースである。ただし、国立長寿医療研究センターではSS-MIX標準化ストレージを導入しており、電子カルテの臨床データを標準化規約に則って格納している同ストレージからデータを取得する仕組みだ。「以前からプロトタイプと言えるインタフェースを利用してきたが、ジュッポーグループに再開発を依頼し、モジュール化しました」(渡辺氏)。