メガソーラー事業にまつわる資産すべてが担保

 一般的に銀行が企業に事業資金を融資する場合、企業の事業モデルや信用力に着目して無担保で行う場合もあるが、土地や建物などの不動産を担保として融資契約を結ぶケースが依然として多い。企業が倒産した場合、銀行は最終手段として不動産を売却して融資した資金を回収することもある。メガソーラーによる売電事業にこの考え方を当てはめると、一般的に数億円の事業資金を融資することは難しい。メガソーラーを建設する土地は、郊外の工業用地などが多く、資産価値がそれほど高くないことがほとんど。このため、数億円の融資に対する担保価値を持たないからだ。

 そこで、ABLでは、メガソーラーによる売電事業にまつわるすべての資産を担保とすることで、企業が倒産した場合、売電事業そのものを譲渡して、融資した資金を回収する。FITを活用し、経済産業省から設備認定を受けた太陽光発電の売電事業は、今後、セカンダリー市場(流通・二次市場)が活発化するとみられている。ABLのスキームで、メガソーラー事業の資産をすべて担保として押さえていれば、事業主である企業の本業が破綻した場合など、資産から切り離して売電事業ごと転売することも可能になる。

 常陽銀行の中川磨・営業推進部総合金融サービス室主任調査役は、「地方には売上高10~20億円規模の企業が多い。出力1MWのメガソーラーの事業費は約3億円。こうした中小企業がメガソーラーを建設して売電事業を始めようとしても、過大な初期投資は企業にとっても大きなリスクとなり、企業体力や担保を考慮する必要があった。それが、ABLの手法によって、資産価値の高い不動産の担保がなくてもメガソーラー事業に融資できるようになった」と、ABLの意義を強調する。

 ABLによる融資手法は、事業そのものを担保とし、事業収入が返済原資になるという点で、プロジェクトファイナンスの手法と類似した面もある。実際、「太陽光発電事業のリスクを洗い出し、適切に対処していく過程では、プロジェクトファイナンスのノウハウを準用している」と、中川主任調査役は話す。A社のメガソーラーでも、EPCサービス企業には実績のある大和ハウス、太陽光パネルには韓国の大手企業グループに属すハンファQセルズ、PCSはメガソーラー向けに最も実績のあるTMEICの製品を選定するなど、企業の持続性とシステムの信頼性を優先して設計・建設している(図4)。ただ、「ABLは、あくまでコーポレートファイナンスの1つの手法」とも強調する。

図4●パワーコンディショーナー(PCS)は、実績のある東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した
(出所:日経BP)
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