常陽銀行は200件以上に融資を実行

 プロジェクトファイナンスとコーポレートファイナンスの根本的な違いは、前者が「事業」に融資するのに対し、後者は「企業」に融資する。プロジェクトファイナンスでは、発電事業に乗り出す企業(スポンサー)の本業と明確に区別するために、売電事業だけを手掛けるSPC(特定目的会社)を新たに設立し、銀行はSPCに融資する。これに対し、ABLは、太陽光発電事業を始める企業に融資する。融資を受けた企業は、新事業の1つとしてメガソーラーによる発電事業に取り組むことになる。

 A社の場合も、メガソーラー事業は同社にとっては新規事業になる。会計処理上、売電収入はまず部門別売上高の1つとして計上するが、最終的には、本業の売上高と合算して損益計算書を作成する。貸借対照表についても、メガソーラー事業の動産資産と同事業への融資は、本業の資産や負債と合算して作成する。

 プロジェクトファイナンスの場合、売電収入はSPCの口座に振り込まれ、銀行への返済はその口座から直接、支払われる。スポンサー企業といえども銀行の了解なしに自由に売電収入を引き出せない仕組みになる。半面、SPCの売電事業が何らかの原因で破たんして損失を出しても、スポンサー企業は出資額とスポンサーサポート契約で事前に取り決めた範囲以上の追加負担は負わない。一方、ABLによって企業が始めた売電事業は、融資を受けた企業の新事業なので、企業が売電収入を管理できる半面、売電事業の予期せぬ損失などで追加コストが発生するリスクも残る。

 常陽銀行の中川主任調査役は、「ABLは基本的にはコーポレートファイナンスなので、太陽光発電事業のリスクがゼロでないことを考えると、企業の体力に応じて融資額には限界がある。売上高10億~20億円の中小企業の場合、出力1~2MWのメガソーラー事業が適正な規模」と話す。常陽銀行は、ABL手法を用いた「LALAサンシャイン」という太陽光発電支援融資制度を商品化し、すでに200案件以上に融資を実行し、現在も約100案件が進行中だ(図5)。案件1つの出力規模は1MW前後が多いという。

図5●常陽銀行のLALAサンシャインの融資実行額の推移
(出所:常陽銀行の資料をもとに日経BP作成)

 常陽銀行では、専門的な知識の必要な太陽光発電事業に対するABLに関しては、本店に専門チームを配置して、案件の発掘や太陽光発電に関心のある企業を支援している。「ABLに基づいた契約書のひな型を独自に作成したことで、それぞれの案件に効率的に対応できるようになった」と、中川主任調査役は言う。A社が、常陽銀行の提案をきっかけに、メガソーラー事業を迅速に立ち上げたことも見ても、地方の有力銀行によるサポートの重要性が伺える。本来、地域に根差す再生可能エネルギーは、地方の企業が主体的に開発し、地域経済を活性化していくことが理想だ。意欲のある企業を専門知識と資金面で支える地方銀行に対する期待が、ますます高まっている。