――太陽光発電設備の不具合で事故が起きた場合、訴訟のリスクがあるとのことだが、架台などの構造物の耐力を正確に把握するためには、それらを構成する部材や部品の耐力に関する詳細な情報がないと算出できないのではないか。部材や部品メーカーは、こうした情報を提供しているのか。

吉富電気 吉富政宣氏
(撮影:森田 直希)

吉富 部品情報はあまり公開されていないので、市販品を用いる場合は、破壊試験やFEM(有限要素法)解析をする必要を生じてしまう。

 ある部品が破壊するかどうかを検討するには、外力と耐力の関係を見る必要がある。そして、耐力>外力ならば、OKと見做すことができる。

 このうち耐力が不明だと、比べることができなくなることが、今の部品情報非公開の問題である。

 もう一つの問題は、これまで述べてきた風荷重などの外力のことである。ともかく、議論の上では、外力と耐力とを区別しなければならない。外力の検討については、メーカーの仕事ではないのだから、設置業者が検討する必要がある。

 例えば、第3回で紹介したように、本来は設計時に、実際にかかる風圧力のデータを得るために、風洞実験で風力係数を求める必要があるが、それに相当する風洞実験のデータを実験により自分で集めないとならない。しかし、これは全て自前でやる必要はない。学会で公開されている場合は、それを活用すれば良い。

 20年間の稼働を前提とした太陽光発電システムならば、それに相応しいリスクへの対応が必要になる。それには、正確な情報に基づいた判断が必要だが、そうした認識が甘いように感じる。

 本来なら稼働期間内に事故が起きる確率を把握し、それに対応したリスクマネジメントを構築するというプロセスになるが、果たしてどれだけの企業ができているのだろうか。

 太陽光発電システムの架台に、不具合や故障が生じる確率は、法令が求める耐力を最低限に満たすように設計すると、供用期間が20年間の場合、33%の事故確率となる。最初の議論の繰り返しになるが、太陽光発電の長期信頼性を考える時は、自損のみならず、第三者への加害性を忘れてはならない。こうしたリスクに対して、どのように対応していくのか、今後、太陽光発電が産業として健全に発展していくためには、こうした視点の議論が必要だ。

産業技術総合研究所 太陽光発電工学研究センター システムチームの加藤和彦氏
(撮影:森田 直希)

加藤 架台は典型的な例だが、それ以外の設備も含め、リスクマネジメントが不十分な発電事業者や関連事業者が多いのではないかと疑念を持っている。当たり前のことだが、リスクマネジメントとは、まず、リスクを認識して、そのリスクに対してマネジメントするものである。

 だが、太陽光発電の場合、リスクマネジメント以前に、そもそも、そのリスクの存在自体を認識していないことが問題だと感じる。

 例えば、太陽光発電向けの損害保険が紹介される際、発電開始後の運用時のリスクは、あまり紹介されていないように見える。天候による発電量のリスクや、パワーコンディショナーが故障で停止するといった内容にとどまっていることが多い。

 メガソーラーに設置した太陽電池モジュールの場合、リスクマネジメントの観点では、モジュールメーカーから15年~25年間の保証付きで購入しており、その保証で対応することになるだろう。

 しかし、太陽電池モジュールの出力性能が低下していることまではわかっても、設置したモジュールの数が膨大なため、不具合が起きているモジュールをすぐには特定できない。