メガソーラー(大規模太陽光発電所)を単なる「売電事業」だけでなく、ほかの価値を見出そうとする動きがでてきた。「太陽光」という地域の資源を活用することから、常に「地元への貢献」が課題になるが、いかに地域活性化につなげるかという視点で、さまざま手法が出てきた。一方、ドイツでは、再生可能エネルギー由来電力の買取価格が下がるにつれ、太陽光発電の電気を売電するより、自家消費する方向に変わってきた。メガソーラーを電力システムのなかで、どのように位置づけるか、国内外で試行錯誤が始まっている。

売電だけじゃない! 新・メガソーラー活用術
目次
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3つの設置角を採用した山形の「積雪対応メガソーラー」の検証結果
豪雪地域に合った運用を模索、除雪と除草はスポーツクラブに委託
山形県天童市大町にある「最上川流域下水道 山形浄化センター」は、山形県の下水処理施設で、山形県建設技術センターが運営している。この敷地内に、出力1.995MWのメガソーラーがある。
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営農型メガソーラーで初の「プロファイ」、耕作放棄地を再生
ソーラーシェアリングのメッカに歴代首相3人が参集
千葉県匝瑳(そうさ)市飯塚の開畑地区が、日本有数のソーラーシェアリング(営農型太陽光発電所)の集積地になりつつある。同地区には、緩やかな斜面に広大な畑作地が広がる。だが、後継者不足もあり、約4分の1が耕作放棄地となっている。雑草が生い茂ったり、廃棄物を不法投棄されたりした土地もあり、深刻な問題になっ…
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メガソーラー稼働を機に「限界集落」に活気
特産大豆「八天狗」を売り出し、地域をブランド化
JR山手線・渋谷駅東口に直結する商業施設「渋谷ヒカリエ」は、百貨店やミュージカル劇場のほか、時代の先端を行く商店が軒を連ねる。8階にある「d47食堂」は、47都道府県のグルメ食材を使った地域色の強い定食を提供している。
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パネルの下に「葵の御紋」!? フタバアオイと太陽光をシェア
「葵染め」で地場産業と連携して新商品を開発
福井県鯖江市(さばえし)は、眼鏡フレームの国内生産量で約8割のシェアを持つ「眼鏡の街」として知られる。だが、特産品はそれだけではない。手織りの「石田縞(いしだじま)」から発展した織物、そして、歴史のある「越前漆器」など、伝統的な工芸品の産地でもある。
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駐車場屋根と防災拠点を兼ねるソーラーカーポート
売電に加え、環境、快適、防災の“一石四鳥”を追う太陽光発電所
残された太陽光発電所のフロンティアとして、屋外駐車場の屋根が注目されている。新たな造成をせずに、平坦で日当たりの良い立地が手に入る上に、ビルなど需要設備と隣接しているため、系統連系が容易で、将来的に自家消費モデルも選択できる。
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FITと決別したコマツの脱化石・戦略
太陽光とバイオマスで電力・重油の7割を賄う
建設機械大手のコマツは、石川県小松市にある「コマツ粟津工場」内の建設機械組立工場をリニューアルしたのを機に使用電力の約7割、使用する重油の3分の2を再生可能エネルギーで賄うことに成功し、化石燃料を使わないモノづくりに大きく前進した。
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電力小売り全面自由化スタート、「再エネ比率」で火花
消費者の選択肢、地産地消で「FIT電気」に脚光
4月1日、住宅など低圧需要家向けの電力販売への参入が解禁となり、電力小売りビジネスが全面的に自由化された。電力小売事業者への登録数は280社に達し、顧客獲得競争が活発化している。1つの電力系統を共同利用する電力小売市場では、電力供給の品質に差がないため、差別化できるのは、「価格」と「電源種別」しかな…
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ソバと太陽光を分け合う沼田のメガソーラー
「藤棚式」架台に100Wパネルを1万枚設置
群馬県北部に位置する沼田市利根町は、平成の大合併により沼田市に編入された旧利根村だった地域。赤城山や皇海山(すかいさん)など著名な名山に囲まれ、80%以上を山林が占める。高冷地野菜を主体とした農業と、林業が盛んだが、近年は人口減少が急速に進んでいる。
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コウノトリの豊岡市が考える「太陽光発電経済の循環」
地域に合った雪対策を検証、“市内産パネル”を支援
兵庫県北部に位置する豊岡市。かつて但馬国(たじまのくに)と呼ばれ、多くの史跡とともに豊かな自然が息づく。北は日本海、東は京都府に接し、中央には多様な生物相で知られ、ラムサール条約にも登録された円山川が流れている。
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地域の非常用電源を兼ねた「市民オーナー発電所」
災害時は自立運転し、登米市に電力を提供
宮城県北部の登米市は、広大な田んぼの広がる日本有数のコメどころ。宮城米「ササニシキ」「ひとめぼれ」の主産地として知られる。東日本大震災では、震度6強に見舞われ、市内全域が停電した。電気のない生活は、内陸部で約1週間、沿岸地域では、約1カ月にも及び、市民の多くが日々の生活に困窮した。市ではこうした教訓…
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太陽光の電力を直流送電してデータセンターで活用
超電導ケーブルでの実証事業も開始
データセンターを運営するさくらインターネットは8月10日、北海道石狩市に出力200kWの「さくらインターネット 石狩太陽光発電所」を建設した(図1)。同発電所は、カナディアンソーラー製のパネルを採用し、積雪対策から設置角45度で設置した。
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屋根上太陽光の電力を駅構内で利用、1MWに達した「東西線ソーラー発電所」
千葉県船橋市の西船橋駅は、JR東日本と東京地下鉄(東京メトロ)、東葉高速鉄道が乗り入れる千葉県屈指のターミナルだ。5~8番線は東京メトロ・東西線のホームで、水色のラインカラーの入った電車が行き交う。これら4つのホームは2015年3月にリニューアル工事が完了し、エスカレーターなどが増設されるとともに、…
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水上メガソーラーで、水草抑制やパネル冷却効果も
工法の工夫で地上設置と初期投資が遜色ないレベルに
兵庫県加西市にある逆池(さかさまいけ)の水上で、出力約2.3MWのメガソーラー「兵庫・加西市逆池水上メガソーラー発電所」の運用が始まった。水上に設置したメガソーラーとしては、世界最大規模となる。京セラと東京センチュリーリースの合弁によるSPC(特定目的会社)、京セラTCLソーラー(東京都千代田区)が…
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メガソーラーの電力で京葉線が走る! JR東日本が電力網に導入
PCSの協調制御による電圧上昇抑制に着手
JR東日本(東日本旅客鉄道)は、千葉市美浜区にある車両基地「京葉車両センター」において、出力約1.0MWのメガソーラーを運用している。同社はこれまで、さまざまな環境保全技術を導入する「エコステ」化の一環として、東京駅、四ツ谷駅、平泉駅や海浜幕張駅などに、小規模の太陽光発電システムを導入し、発電した電…
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メガソーラーとバイオマスのW発電、売電しつつ排熱活用
<第12回>神戸市・垂水処理場で稼働した公民連携による再エネ発電所
神戸市垂水区の海沿いを走る山陽電鉄。同線の東垂水駅を降りると、すぐ目の前に「平磯芝生広場」が広がり、海沿いの堤防では、釣り人の姿を目にできる。この広場の地下と東隣には、神戸市の「垂水処理場」がある。市内の下水道から出る汚水を処理している。
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ガス発電機を併設した島田市のメガソーラー
<第11回>LPGタンク備え、災害時に10日間、電力を供給
2009年に静岡県島田市に開港した「富士山静岡空港」。2014年秋、まだ初々しい飛行場に隣接して、新たな名所が加わった。滑走路のある高台の麓、空港に向かう道路を挟んで、細長い敷地に6300枚の太陽光パネルが並べられた(図1)。2014年11月20日に竣工した、出力約1.5MWの「TOKAI 富士山静…
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再エネ比率30%を目指す藤沢のスマートタウン
<第10回>「コミュニティソーラー」で非常時対応
神奈川県藤沢市は、江の島や湘南海岸などの観光地で知られるが、内陸には日本を代表する大手メーカーの工場や研究所も多く、第2次産業が集積する工業地域でもある。だが、工場の海外移転などに伴い、工場跡地の再開発が進んでいる。
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<第9回>淡路島に竣工した関西最大のメガソーラー
充実した見学施設で、島外からも見学者を呼び込む
神戸市から明石海峡大橋を渡って、最初のインターチェンジである淡路ICを降りて約7分。丘陵の林間を直進すると、「淡路貴船太陽光発電所」と書かれた案内板が出てくる。案内板には、太陽をモチーフにした発電所独自のキャラクターもある(図1)。稼働済みのサイトとしては、関西で最大規模となるメガソーラー(大規模太…
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<第8回>営農型太陽光発電で果樹栽培を実践
ブルーベリーの次は、イチジクに挑戦
農業生産法人・とまとランドいわき(福島県いわき市)は、農業先進国であるオランダの栽培技術を取り入れたガラス温室などで、高品質で安定した農産品の生産を実現している(図1)。年間生産量の概要は、生食用トマト900t、生食用イチジク30t、パプリカ20t、イチゴ20tなど。販売に関しても、市場出荷中心から…
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<第7回>熊本県山都町の限界集落をメガソーラーで活性化
観光農園や農産物ブランド化を目指す
熊本県山都町は九州の真ん中に位置し、町域は東西約33km、南北約27kmにおよび、阿蘇カルデラを形作る南外輪山のほぼ全域を占める。豊かな自然に恵まれるが、主体となる農林業の若い担い手が少なく、高齢化と少子化が進んでいる。