
応用物理学会から
目次
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ダイヤモンドの魅力、高機能センサへの応用の可能性
ダイヤモンド半導体は特異な物性を有し、それを用いた新たな価値を創生する応用が期待できる。本稿では、ダイヤモンド中の窒素‐空孔中心(NV)を用いた室温で動作する量子センサの特徴を示し、NVセンタアンサンブルによる高感度化技術を紹介する。これにより、蛋白質の構造解析に必要なナノメータの領域、細胞計測に必…
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次々世代パワー素子、高耐圧ダイヤモンドpinダイオード
卓越した材料ポテンシャルからデバイス実現に向けて
ダイヤモンドは、次世代パワーデバイス材料として実用化が始まりつつあるSiCやGaNを超える材料ポテンシャルを有し、次々世代パワーデバイスへの応用が期待される。高い絶縁破壊電界強度から予測される超低損失化だけでなく、高い電流密度耐性や高温での安定性により超高電圧領域への応用も期待できる。我々は、ダイヤ…
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グラフェン超薄膜と銀ナノワイヤを用いた透明電極フィルム
低抵抗で高透過率、フレキシブルで軽くて低コストな透明電極フィルムは光デバイスの高機能化にとって重要である。ITO膜に代わるものとして、グラフェンや銀ナノワイヤは有力な候補である。電子デバイス応用を考えた場合、グラフェンは導電性に、銀ナノワイヤは平坦性と化学的安定性、エネルギーレベル制御に欠点を有する…
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評価は妥当か、有機デバイスの信頼性に効く水蒸気バリア性
ハイバリアフィルムのバリア性評価
フレキシブル有機デバイスにとって、外部から侵入する水蒸気は深刻な劣化要因となる。デバイス寿命を確保するためには、高いバリア性を有する封止(ふうし)技術、特にハイバリアフィルムの開発が重要である。しかし、水蒸気バリア性評価の信頼性には課題があり、バリアフィルムの性能評価が困難な状況である。本稿では、国…
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面発光レーザーの進展
現在の短距離系光通信の光源として中心的な役割を果たしている面発光レーザーの発明から、およそ38年が経過した。これまでの研究開発により、レーザーとしての性能も通常の半導体レーザーをしのぐようになり、アレイ化などの特徴を生かした応用も実証されてきた。特に短距離の光リンク用光源として成長し、光センサ、医療…
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ウェアラブル・フレキシブル健康管理デバイス
近年、次世代ウェアラブルデバイスとして、絆創膏(ばんそうこう)のように装着感なく快適に健康状態のリアルタイム計測を行うウェアラブル・フレキシブルデバイスの研究が国内外で盛んに行われている。本研究では、ウェアラブル・フレキシブル健康管理デバイスの実現を目指し、衛生的かつ低価格を実現する使い捨てのセンサ…
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非侵襲で海馬を観察、生体深部の高解像度イメージング技術
光技術を用いたイメージング技術はバイオ・物性研究に欠かせないツールとなってきている。多光子励起顕微鏡法によるin vivoイメージングは近年の脳機能研究の発展に多大な貢献をしてきている。脳は散乱体であり、通常ではほんの数百μmの深さしか可視化できない。我々は新規高出力半導体レーザー光源および高感度蛍…
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トランジスタ型強誘電体メモリの応用、脳型デバイスも可能
強誘電体ゲートトランジスタは、高速動作・高書き換え耐性・低消費電力を併せもつ。本稿では、多値記録性能や動作ダイナミクスを利用した応用展開として、衝撃記録素子および脳型デバイスへの応用について解説する。
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量子もつれ顕微鏡、従来の感度限界を超える
光学顕微鏡の中でも、微分干渉顕微鏡は、非侵襲観察・計測手段として、生物学などで広く用いられている。その深さ方向分解能や計測精度は、従来の光源を用いた場合、標準量子限界と呼ばれる信号雑音比で決まる。しかし、光に含まれる光子間の相関を制御した、量子もつれ光を用いることで、この限界を超えることが可能になる…
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太陽電池モジュールの劣化機構の解明と信頼性向上技術
太陽光発電システムは、メガソーラーや住宅用で急速に普及が拡大している。長期間にわたる発電量の維持・向上や発電コスト低減のために、太陽電池モジュールの長期信頼性や寿命がますます重要となっている。本稿では、結晶Si太陽電池モジュールの屋内環境試験による高温・高湿条件下での劣化について、劣化メカニズムと対…
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生体埋め込みデバイスで、脳の中を直接見る
筆者らが若かりし頃、「サイバーパンク」というジャンルのSF小説がはやりました。人間の脳が埋め込みインタフェースを介して電脳空間(=サイバースペース)に直接接続される、という世界観の原点といえるもので、その後の『攻殻機動隊』や『マトリックス』といった作品につながります。さて現実の世界では、フィクション…
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ナノバイオの進展はアジアが貢献、日本を要に情報発信を
ナノバイオテクノロジーの国際シンポジウムの企画メンバー、大阪大学大学院 教授 民谷栄一氏に聞く
半導体や超伝導、ナノテクノロジーなど、産業界に欠かせない最先端技術が集まる応用物理学会は、バイオテクノロジー関連もカバーする。同学会内には有機分子・バイオエレクトロニクス分科会が設置され、ナノテクノロジーと組み合わせた「ナノバイオテクノロジー」が同学会で盛んに取り上げられ、半年ごとに開催する講演会に…
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テラフレーム/秒超を実現、超高速光学撮像法が拓くフロンティア
高速イメージングはさまざまなダイナミクスを研究するために最も重要な手法であり、これまでにも多くの現象の発見・解明に貢献してきた。我々は新しい領域を開拓するツールとして、従来のCCD・CMOSイメージセンサとは異なる2 種類の新規の高速イメージング技術を開発した。STEAMおよびSTAMPと呼ばれるこ…
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ナノチューブで熱電変換に挑む、身に着ける電力源を視野に
ゼーベック効果を自由自在に制御する
真夏の炎天下を歩いていると、この熱(この場合は、気温と体温との温度差)を電気として再利用できればなんとすばらしいことか、と思われた経験のある方も多いかと思います。熱を電気に変える素子である熱電変換素子の性能がもっと向上し、フレキシブルかつ伸縮性に富む材料であれば、体温を熱源として電力を発生させて、身…
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高速・高感度な微量水分計をボールSAWセンサで実現
筆者らは、球面上を伝搬する表面波は自然に細い平行ビームを形成して多重周回する場合があることを見いだし、これを利用した高感度なセンサを考案した。このセンサは平面基板上の表面波センサより感度が高く、その結果、感応膜を薄くでき、応答速度も向上した。水素ガスに対しては、あらゆる種類のセンサ中、最も広い検出濃…
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3次元物体の大面積ホログラム撮影に向けたスキャナ技術
ディジタルホログラフィや計算機合成ホログラムなど、コンピュータ上でホログラムを扱う技術を総称してコンピュータホログラフィと呼ぶ。コンピュータホログラフィの応用は多岐にわたるが、本稿では、特に大面積のホログラムを撮影するためのスキャンニング技術について紹介する。
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スピン波を利用した磁化スイッチング
ハード磁性層とソフト磁性層を交換結合させた薄膜において、ソフト磁性層内に磁気モーメントの波である「スピン波」を励起すると、ハード磁性層を小さな外部磁場で磁化スイッチングできるようになる。このスピン波アシスト磁化反転は、磁気記憶デバイスが直面する情報の高密度化とデバイスの低エネルギー動作の両立という課…
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8mすばる望遠鏡から次世代30m望遠鏡TMTへ
国立天文台は主鏡をコンピュータ制御し最高の画質を誇る8mすばる望遠鏡をハワイ島マウナケア山頂に1999年に完成した。10年後には、大気の揺らぎによる像の劣化を実時間補償してその解像力を回折限界にまで高める補償光学装置とレーザーガイド星生成装置の開発により、すばる望遠鏡の視力はさらに10倍になった。す…
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Geゲートスタックの材料科学的制御
ロードマップはさておいて
Geを用いた電子デバイスは長い間忘れられた存在であったが、最近その研究が急速に盛んになってきている。これは、Siデバイスの限界がみえてきたということもあるが、Geを扱ううえでの難しさの理解が進み、それを克服する技術が開発されつつあることにもよる。本稿ではGeデバイスの何が問題であり、それをどのように…
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酵素を用いるバイオ発電デバイス
酵素を電極触媒とするバイオ電池は、糖やアルコールなどの安全で豊富な化学エネルギーから直接発電するデバイスであり、電池全体が有機物で構成できるなど、生体および環境に優しいのが特徴である。