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 人の全遺伝情報(ヒトゲノム)が2003年に解読されてから10年余り。この間、遺伝子解析装置(シーケンサー)の進化を原動力に、ゲノムの解析コストは劇的に下がった。1人当たりの解析コストは、2014年には1000米ドル(約10万円)を切る見通しだ(関連記事1)。一般消費者を対象に遺伝子解析サービスを事業化する動きもここにきて本格化している(関連記事2同3)。

 こうした状況から「誰もが自分の遺伝情報を利用できる時代が来た」と説くのが、日本におけるゲノム解析研究をリードする東京大学 医科学研究所ヒトゲノム解析センター教授の宮野悟氏である。2014年7月7日に開催される「医療ビッグデータ・サミット2014」(主催:日経デジタルヘルス)で基調講演を予定している同氏に、ゲノム解析技術の急速な進歩が社会に何をもたらすのかを聞いた。

(聞き手は大下 淳一=日経デジタルヘルス)

――ヒトゲノム解読から10年余りが経ちました。この間、ゲノム解析の分野ではどのようなパラダイムシフトが起きたのでしょうか。

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ディー・エヌ・エー(DeNA)の遺伝子検査サービス「MYCODE」の発表会の様子。同サービスには、東京大学医科学研究所が協力する。右が宮野氏。左はDeNA 取締役 ファウンダーの南場智子氏、中央は東京大学医科学研究所所長の清野宏氏

 従来、ゲノム解析は主に学術的な研究を目的としていました。ここにきて、臨床への応用に軸足がシフトしてきたことが大きな変化といえます。ゲノム解析の結果を“臨床的に解釈・翻訳する”動きが始まったのです。

 従来のゲノム解析分野で主流だったコホート研究は、被験者にとってはいわばボランティアでした。個人が利用できるような形で解析結果が返されるわけではなかったからです。対して、ここにきて始まったのは“クリニカル(臨床)シーケンス”。何らかの疾患をわずらっている患者のゲノムを解析し、その結果を患者個人に返して治療方針の決定などに活用するというものです。医科学研究所においても、臨床シーケンスを可能とするための体制作りを進めています。

 こうした流れは、ゲノム解析研究に投じられるお金の出所を大きく変化させています。従来は、学術研究のための「研究費」が投じられてきた。これに対し、臨床シーケンスが始まることで、「医療費」という巨大なお金が投下される環境が整ってきたわけです。