医療法人社団 秀友会(福島県いわき市)は、入所者の在宅復帰に向けた支援の取り組みを強化している。在宅復帰委員会を設置して自宅退所援助のワークフローを見直すとともに、FileMakerで構築した「在宅復帰支援シミュレーター」を活用している。居宅サービスの組み合わせから、家族が最も気にかける自己負担額を算出でき、入所者の回復状況を説明するうえでも、効果を上げている。

在宅復帰率向上に向け自宅退所援助への取り組み見直し

 福島県で初めて老人保健施設の認可を受け、1988年11月に100床で開設した「サンライフゆもと」は、1994年に認知症専門棟(50床)、2004年にはリハビリテーション棟を増設した。また、短期入所療養介護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、グループホームなどの事業所も運営している。

施設長で医師の箱崎秀樹氏

 2012年の介護報酬改定では、在宅復帰支援型の介護老人保健施設(以下、老健施設)の機能を強化する観点から、在宅復帰の状況やベッドの回転率などを指標とし、機能に応じた報酬体系への見直しが行われた。いわゆる「在宅復帰強化型老健施設」に移行できれば増収が見込める一方、その基本要件は退所者の在宅介護移行(在宅復帰)率が50%以上と厳しいものだった。

 「入所者の在宅復帰は、自宅でも介護できる目処が立った時点で家族や本人が納得できる状態で行われるべきで、復帰率を上げることを最優先にしようとは思っていません。私たちは以前から一貫してこう考えていますが、一方で生き残りを図るため、自宅退所援助への取り組み強化は大きな課題でした」。施設長の箱崎秀樹氏はこう話し、2012年度改定で新設された在宅復帰・在宅療養支援機能加算を取れる在宅復帰率30%以上を目指した取り組みを始めたと振り返る。

リハビリテーション室室長の齊藤隆氏

 在宅復帰率向上に向けた取り組み強化は、それまで実施してきた自宅退所援助ワークフローの見直しから始めた。「入所者は、歩行困難になったり、認知症の進行で暴れるようになったなど、家族による介護が困難になった方が少なくありません。支援相談員による家族指導中心の退所援助だけでは、なかなか自宅退所につながらないのが現状でした。そこで、在宅復帰委員会を設置して、自宅退所援助ワークフローを見直し、家族の理解が得られることを第一に、自宅退所に向けてのアプローチと情報提供のあり方を再構築しました」(リハビリテーション室室長の齊藤隆氏)。

 自宅退所援助ワークフロー見直しに当たっては、全国老人保健施設協会(全老健)が普及を進めるケアマネジメント方式「R4システム」を導入し、目標達成後に再度、在宅訪問調査と実現可能な在宅復帰のシミュレーションを繰り返していくこととした(図1)。実際には、FileMakerで開発した「在宅復帰支援シミュレーター」を用い、在宅介護で利用する居宅サービスの組み合わせと想定自己負担額を提示して家族の不安の解消に努めるほか、入所者の回復状況の映像などを家族に見せて、在宅復帰の理解を得られるようにした。

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