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FileMakerによるアプリケーション資産を生かす

 松波総合病院は、これまでオーダリングシステム(日本IBM製)を運用しており、また、放射線画像は全てモニター上で診断・閲覧可能になっていたが、紙カルテの運用を続けてきた。一方、2004年からは、FileMakerで作成した臨床支援システム(CSS)を病院全体で使用し、そのアプリケーション数は約130にも上っていた。その数々の臨床支援ツールの独自開発を主導してきたのが、副院長・診療局長の松波和寿氏だ。同氏は、日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)の副代表を務めている。J-SUMMITSは、「医療現場に蓄積された業務に関する知識や経験を生かして、医療者自らが市販のアプリケーションソフトウェアを駆使して、自らの業務に使用するITシステムを構築する活動の普及、促進を図る」ことを目的とする。松波氏は新病院情報システム構築の経緯を次のように述べる。

副院長・診療局長の松波和寿氏

 「長い渡り廊下で本館とつながるノースウィングの新設により、紙カルテ搬送に伴う時間ロスが、迅速な医療サービスを提供する上で無視できない課題になりました。また、チーム医療をより効率的・効果的に提供していくためにも、カルテの電子化は避けられない状況でした。しかし、ベンダー製の電子カルテは、当院の求める医療サービスの効率化に十分なシステム環境とは言えず、以前からFileMakerで開発してきたCSSという財産を生かした基盤を構築することが不可欠でした」(松波氏)。

 CSSは、診断書や各種同意書、退院時書類、主治医意見書などの書類作成から、手術予約、輸血オーダー、化学療法、放射線治療申し込み、クリニカルパス発行などの業務オーダー系、インシデント報告や感染症報告のような報告系など、様々なツールから構成されている。そのため、医師だけでなく、看護師、薬剤師、栄養士、事務職員など全ての職種で多岐にわたって使用されており、「CSSなしでは日常業務ができない状態」(松波氏)という。

 こうした背景から新病院情報システムは、CSSのアプリケーション資産を生かした連携が可能な電子カルテシステムを導入すること、また診療現場では、同意書など紙の書類を運用することが多いため、それらを電子的に保存・参照できる環境を構築できることの2点を大きな狙いに、「M@TRICS」(Matsunami Total Realtime Information and Communication Systems)と名付けられ、導入が進められた。

 M@TRICSのコアは、(1)FileMakerで開発したCSS、(2)NECの電子カルテシステム「MegaOakHR」、(3)これらで生成される情報と紙文書などをスキャン(電子化)した情報を統合・検索・参照する仕組みである富士ゼロックスの診療記録統合管理システム「Apeos PEMaster ProRecord Medical」(以下、ProRecord Medical)で構成される。このうちMegaOakHRとProRecord Medicalを採用した理由を松波氏は次のように説明する。

 「電子カルテベンダーの中でNECは、M@TRICSコンセプトに理解を示してくれました。この点に加え、導入実績や費用対効果を総合的に判断して同社のMegaOakHRに決定しました。NECの電子カルテとFileMakerの連携実績はほとんどないのが現状ですが、臨床現場での利用実績が物語るようにFileMakerは重要な存在であり、NECの協力の下に連携モデルを作りたいと考えました。一方、ProRecord Medicalの採用は、J-SUMMITSメンバーである名古屋記念病院副院長の草深裕光先生がFileMakerを組み合わせたシステムを実現していたために決めました(関連記事はこちら)」(松波氏)。