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 介護ロボットをはじめとする「生活支援ロボット」の安全性に関する国際規格「ISO 13482」が2014年2月1日に発行されてから、半年。生活支援ロボットの開発・実用化の追い風になると期待される規格発行だが、介護や看護の現場はロボットの実用性をどう評価しているのか――。

 2014年7月22日に開催された「介護ロボットシンポジウム in 海老名 2014」(主催:神奈川県、かながわ福祉居住推進機構、かながわ福祉サービス振興会)に、その一端を垣間見た。「作り手」と「使い手」、両者の間にはまだまだ埋めるべきギャップがありそうだ。

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さまざまな介護ロボットが集まった展示会場

 シンポジウムでは冒頭、産業技術総合研究所(産総研) 知能システム研究部門長の比留川博久氏が登壇。「ロボット介護機器の開発動向」と題して講演した。

 比留川氏によれば、国内ロボット市場は直近で6000億円規模。その大半は製造業などで使う産業用ロボットであり、介護・福祉用ロボットの市場は数億円規模にすぎないという。一方、日本では2005~2025年に労働力人口が約470万人減り、65歳以上の高齢者人口は約933万人増えると予想されている。計1400万人が「支える側」から「支えられる側」にシフトするため、介護ロボットの導入など「何らかの施策を打たなければ社会は成り立たない」(同氏)。

 介護ロボットの実用化がなかなか進まない理由として、比留川氏が挙げたのは2つの点である。1つは、介護ロボットの開発元に大企業が多いこと。事故など安全面のリスクがある一方で、期待できる売上高は大企業にとっては小さいものであるため、事業化のメリットを見いだしにくいと同氏は指摘する。もう1つは、エンジニア視点に立ったハードウエア単体での開発にとどまり、「介護サービスの実態を理解した上でのソリューションになっていない」(同氏)こと。

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講演する産総研 知能システム研究部門長の比留川博久氏

 その上で、産総研がこれらの課題を克服するために進めている取り組みを紹介した。第1の課題に対しては、ロボット開発企業が安全性試験をワンストップで行える「生活支援ロボット安全検証センター」をつくば市に開設した。既に複数のロボット開発企業が利用するなど、安全性の課題については克服のメドが立ってきたという。

 第2の課題に対しては、経済産業省が主導する「ロボット介護機器開発・導入促進事業」で多数の企業と進めている、ソリューション開発事例を紹介した。被介護者の排泄を支援する移動型トイレや、認知症患者の徘徊を防ぐ離床センサーなどである。この事業では開発テーマを絞って、そこに予算を集中投下しているという。2013年度は、43社の応募企業から20社を選んだ。

 今後はさらに、介護者と被介護者、機器メーカー、介護事業者、行政という「介護ロボットのすべてのステークホルダーの利害を一致させる仕組み作りが欠かせない」(比留川氏)。具体的には、介護の効率や安全性、サービスの質などを含む介護業務全体の可視化(データ化)とその分析が重要だとした。