約1兆円分を地域の電力小売事業者が代替

――山本氏が会長を務める自民党の資源エネルギー調査会が、6月に電力小売の全面自由化に対して提言した。提言の中で、自由化と連動して地域経済を活性化し、例えば、自治体や地域の金融機関と連携しながら、財源面の手当てを含めて着実に相互調整し、その経済規模は2030年までに1兆円にするという旨の記述がある。

自民党の資源・エネルギー戦略調査会会長の山本拓・衆議院議員

山本 住宅向け電力市場は約7兆5000億円の規模がある。この市場規模を考えれば、1兆円程度の規模を地域の電力小売事業者が担えるのではないかとを考えた。それは、金融機関の力を借りなければ難しいだろう。

 住宅や小規模な施設などが地域の分散型エネルギー発電所による電力に置き換わるイメージで、電気利用者が、地元の電源を使う意欲を持ってもらえれば実現できる。この「約1兆円」という記述は、特に、地方自治体や公的機関に対するメッセージである。

 少なくとも、地域にある役所や公民館、学校などの公的施設が購入する電力については、地方自治体の首長などが決裁者になる。これらの施設が、地域の発電事業者から電力を購入するようにすれば、「1兆円」の達成は可能だろうと考えている。

 逆に、再生可能エネルギーの比率が高い電力小売事業者の売電規模が拡大していかないと、また地域経済は原発に頼らざるを得ない状況に陥ってしまう。しかし、そもそも電力システム改革後には、電力会社(一般電気事業者)は、必ずしも原発の稼働を望まない状況になっていることが十分に予想される。

――電力会社は、少しでも早く原発を再稼働したがっているとの声をよく聞くが。

山本 一般電気事業者の経営環境は、現在と電力システム改革後では、状況が大きく変わる。現在の一般電気事業者にとって、現在のような地域独占権はなくなる一方、供給義務もなくなり、他の発電事業者と同じ土俵に乗ることになる。そのような中で、リスクの高い原発を、無理して使うような経営判断はしないだろう。

 ただし、未償却の発電設備については、投資を回収するために再稼働したいだろう。現在、原子力委員会に提出されている17基の再稼働の申請のうち、1基を除くとすべて償却の済んでいない発電設備となっている。

――そこで、原子力発電所の国営化の議論になる。

山本 電力小売りを全面的に自由化した国は、英国でも米国でも、電力市場の健全性と、CO2排出量の削減目標の実現を両立させるために、原発の稼働が必要になっている。しかし、電力会社にとって、リスクが大きく稼働させたがらないために、英国では原発による電力の買取制度を導入し、そのリスクを国が負っている。

 これに対して、日本の場合、国がリスクを負うことを決めず、市場だけ自由化しようとしているため、各電力会社は梯子を外された形になっている。この問題については今後、政府として議論していく必要がある。