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推定入院患者数の変化を試算、拡大路線を止める

 これまでにデータ解析で成果を上げた事例も紹介した。例えば、患者が支払っていない未収金の額が減らないことに関連して、会計部門の努力不足を幹部から指摘されたケース。それまでは未収金の月額合計のみを算出していたのを、未収金の発生月ごとに色分けして柱状に重ねたグラフにした。

 すると、職員の努力で未収金は発生から5カ月程度でほぼ回収し終わるが、毎月新たに未収金が発生するために総額が減らず、全体としては放置しているように見えることが分かった(写真4)。

写真4●西田氏があぶり出した未収金額の推移
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 さらに、コンサルティング会社から、新病棟を建設して病床数を増やすように提案を受けたケースにも言及。幹部たちは売り上げや利益が増えそうなこの提案に乗り気だったが、西田氏は15歳未満、15~64歳、65~74歳、75歳以上の4区分に分けた広島市の人口予測データと2006年から11年までの入院患者数のデータを基に、将来の患者数を推定。現状のままでは、2011年に1万人を超えていた入院患者数が、2015年には9300人まで減るという試算を提出し、計画推進を思いとどまらせたという。

 続いて西田氏は、これまで自身がリードして実施してきた施策について述べた。(1)医療情報、診療記録、医事の3つの部署を同じフロアの隣接した部屋に置いたこと、(2)統計調査部門を経営企画部門から医療情報部門に移管させたこと。「この2つが実現したことで、正確なデータ分析をする環境が整った」(西田氏)と説明した。

 今後の広島赤十字・原爆病院における課題として、西田氏は「現状では利用できるデータを集めきれていないし、担当職員のデータサイエンティストとしての能力もまだまだ低い」と指摘。最も難しい課題として、組織上でデータサイエンスチームの役割が明確になっていない点を挙げた。「現在は医療情報管理課として、データ分析・活用とプラットフォーム管理の2種類の職務を担っている。将来は、戦略室などの名称で独立した幹部直轄の組織になることが望ましいと考える」と持論を展開した。


この記事はITpro 「ITで“今度こそ”変わる日本の医療」から転載したものです。