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収益性の壁と継続的成長の条件

 医療機器という製品の本質は、人々が病気にかかる前に科学技術に基づいた計測や予測で疾病を予防する、あるいは医薬品で治療が十分にできない場合に、技術によって患者の負担を軽減するというニーズの上に成り立っているという見方があります。例えば、Intuitive Surgical社が開発した手術用ロボット。既に実用化されているものの、技術的課題は依然として多いのも事実です。それでも同社製ロボットは、主に泌尿器科で歓迎されています。

 泌尿器科の外科手術は、もともと、前立腺がんや尿路結石などの治療で、多くのニーズがありました。しかし、手術用ロボットが実用化される前の医療機器の技術レベルは、中高年層に集中している患者の身体的な負担を軽減するまでには達していませんでした。この状況を変えたのが内視鏡技術の高度化であり、内視鏡による外科手術です。これが実現したことで患者の身体への負担が軽減され、手術に耐えられる患者が増加しました。ここで受け入れられたのが、Intuitive Surgical社の手術用ロボットです。このロボットは、医療機関において内視鏡を用いた外科手術のできるドクターを増やすことに貢献しています。

 泌尿器分野以外にも、実際の手術に適用して症例数を増やす道筋はありました。しかし、その中で症例数をいち早く増やしたのが、心臓から離れており、患者のリスクが比較的低い泌尿器分野でした。Intuitive Surgical社の売上高は22億米ドル(約2200億円)を超え(2013年12月期)、現在は、循環器などの新たな分野にも手術用ロボットの導入を拡大しています。このように医療機器は、完成された技術によって製品がつくられるというよりも、臨床現場でさまざまな技術と組み合わされて課題を乗り越えながら実用化され、品質が磨かれていきます。

 患者やドクターの未充足ニーズは、過去から現在、そして未来にわたって常に存在します。現段階で既に実用化され、市場に普及している医療機器であっても、患者やドクターのニーズを完全に満たしているとは言い難いといわれています。そもそも医療機器は、医薬品が実現できていない価値を代替する技術であり、医療機器の究極の姿は、服用すれば治る医薬品のようなものなのでしょう。

 そのため患者やドクターは、医療機器をランダムに(現在使用している技術との連続性にこだわらずに)選ぶ可能性があり、その結果、医療機器市場は非連続的な変化を起こしやすいのが実情です。したがって、医療機器ビジネスでは先行投資の意思決定が非常に重要になっています。突発的な技術の登場によって自社事業が奪われるリスクも含めて、技術の変化に対応していくのに十分な規模の投資余力が必要となります。すなわち、医療機器メーカーが今後継続的に成長するための条件は、大まかに以下の2つのいずれかと言えます。

(1)高い収益性を期待できる売上高数十億~300億円未満の企業群に属するか
(2)十分な投資余力を確保できる売上高1000億円以上の企業群に属するか