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技術ニッチかチャネルメジャーか

 それでは、(1)売上高数十億~300億円未満の企業と(2)売上高1000億円以上の企業は、具体的にはどのような事業を展開しているのでしょうか。

 (1)は、競合他社と差異化できる要素技術を自社が所有することによって、技術ニッチのポジションを築くメーカーです。このようなメーカーは、特定のチャネルのドクターと密接な関係を構築しており、ドクターとの対話を通じて、自社の要素技術を応用して製品を設計するスキルのある開発者を抱えています。このような企業は、その特徴から、技術ニッチの医療機器メーカーといえます。

 一方、(2)は、単品からシステム、サービスまでを組み合わせて販売できるチャネルを有しているメーカーです。下に示した図は、医療機器ビジネスの4つのレイヤーです。

医療機器ビジネスの4つのレイヤー
野村総合研究所が作成
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 (2)の企業は、これらの4つのレイヤーの製品・サービスの組み合わせによる事業を展開しています。こうしたメーカーは、顧客により近いところで提供されるBPOサービスおよび業務代行サービスを実施するに当たって、キーとなる製品(ハードウエア)を自社で保有していますが、ユーザーの求めるすべての製品があるわけではありません。そこで多くは、前述した技術ニッチのメーカーとの間で、技術力とチャネル力とを相互に補完し合う関係を築いています。このような企業は、その特徴から、チャネルメジャーの医療機器メーカーといえます。

 たとえば、全世界の売上高が290億米ドル(約2兆9000億円)を超える巨大な総合医療メーカーである米国のジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、J&J)が販売する医療機器は、必ずしも自らが開発・製造している製品ではありません。

 同社が世界の市場シェアでトップを誇る外科用の縫合糸やステープラー(縫合のための医療用ホチキス)の市場を例に挙げると、ここには中小・ベンチャー企業からさまざまな新技術の提案がなされてきました。J&Jはそれらの中から、たとえば新規の医療用接着剤を開発・製造する米国のフジオメッド(FzioMed)、同ジェンザイム(Genzyme)とそれぞれ提携し、欧州、中東、アフリカにおいて自らの販売網で販売していました。

 このようにJ&Jは、ドクターから寄せられる多様なニーズに応えるため、自社がシェアトップを握る市場であっても、他社の製品を併せて販売することでチャネルの維持・拡大を図っています。一方、販売提携を結んだこの2社は、J&Jの世界的な販路を利用して自社の製品の売り上げを伸ばすことができます。2社はこうして獲得した収益を、新たな技術開発に投資できるのです。このように、技術ニッチのメーカーと、チャネルメジャーのメーカーとが、相互補完関係にあるケースは多く見られます。