乾燥地帯では、パネルの汚れで10%の出力低下も

 三宅社長が、太陽光パネルの清掃ロボットの開発に本格的に乗り出したのは2009年。米オバマ大統領のグリーンニューディール政策を受けて北米でメガソーラー建設が始まり、その動きは世界各地に広がり始めていた。乾燥地域などの太陽光パネル用清掃ロボットの開発について相談されたのがきっかけだった。中東や北アフリカなど、太陽の南中高度が高い乾燥地帯に設置した太陽光パネルは、砂塵で汚れやすい。加えて、雨が少なく設置角が低いため、積もった砂塵は長く残る。パネルの汚れが日射を遮り、地域によっては1カ月間清掃しないと、約10%発電量が低下することもあるという。

 こうした設置環境を考慮し、三宅社長は、開発する清掃ロボットの仕様に関し、(1)水を使わないこと、(2)誰が使っても安定した清掃品質を実現できること、(3)高温・乾燥の仕様環境下でも問題なく稼働することーーなどを目指した。そして、この条件に合った清掃ロボットの開発に成功し、来年度の量産にめどを付けた。

 水の利用を避けたのは、乾燥地域ではそもそも水を調達するのが難しいからだ。そこで、さまざまな方式を試行錯誤するなか、前後2つの回転ブラシでパネルにこびり付いた砂埃をかき取り、ファンで送風して砂塵を空気中に飛ばす、という方式に行き着いた(図8)。「中東のメガソーラーで実証した結果、飛散した砂埃は、風に乗って運ばれるので、ほとんど除去できることがわかった。水を使った場合と同様の洗浄効果を実現できた」(三宅社長)という。ブラシに関しては、何十種類も試し、最適な材質に絞り込んでいったという。

図8●前後2つの回転ブラシでパネルにこびり付いた砂埃をかき取る(出所:日経BP)
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