
本連載の第3~第5回では、市場ステージ別に見たメーカーとしての打ち手について取り上げています。第5回(最終回)となる今回は、現在参入している市場が既に成熟期に差し掛かり、市場の成長に乗って事業の成長を実現するのが難しくなっている企業に焦点を当て、成長戦略のオプションと戦略検討・実行上の課題について考えていきます。
悪化する日系医療機器メーカーの事業環境
まず、あらためて、いわゆる日系医療機器メーカーの成長性について見てみましょう。日系医療機器メーカーを、その売上高と成長性に注目して分類すると、下図のように3つのグループに分けることができます。
(1)売上高1000億円以上で成長率5%以上のメーカー
このグループは、これまでの事業成長の結果として、現在、十分な売上高を確保し、そこで得た収益を成長領域に投資することによって、継続的な成長を遂げることができています。これらのメーカーは、成長市場である海外に展開する、あるいは国内で保有する強力なチャネルに流せる製品ラインナップを増やすなどして、売上高を伸ばしています。
(2)売上高1000億円未満で成長率5%以上のメーカー
競合他社との差異化に成功し、日本はもちろん海外でも特徴を強く訴求できる製品を保有しており、さらなる研究開発や海外展開によって高い成長率を実現しているグループです。これらのメーカーは、いずれ(1)のグループへと成長していくことが期待されます。例えば、このグループに属す朝日インテックは、独自性の高い「PTCA(経皮的冠動脈形成術)ガイドワイヤー」で国内ではトップシェア(55%)を誇り、世界シェアでも3割を目指しています。
(3)売上高1000億円未満で成長率5%未満のメーカー
競合他社と差異化する力に乏しい製品しか保有していないため、国内外で価格競争にさらされている、あるいは海外展開に踏み切れない、資金力の点からM&A(企業合併・買収)による事業拡大に手をつけにくい──などのさまざまな課題を抱え、売り上げ成長が低迷しているグループです。これらのメーカーの多くは、日本国内での市場シェアは比較的高い製品を有しているものの、海外市場での存在感は薄いことから、ここでは「ドメスティックニッチ」メーカーと定義します。