【朝日インテックのケース】
もともと産業機器用ワイヤーを製造していた朝日インテックは、1990年代に、心臓に近い冠状動脈疾患治療に用いるPTCAガイドワイヤーを開発して医療機器市場に参入しました。現在、国内市場における同社のシェアは5割を超え、世界でも3割近いと言われています。
同社は1994年に、最初の海外営業拠点となる全額出資の現地法人を香港に設立し、1998年9月にPTCAガイドワイヤーの「CEマーキング」の認証を取得して欧州市場に輸出を開始しました。現在、連結売上高に占める海外売上高比率は50%に迫っています。まさに、ドメスティックニッチからグローバルニッチへと成長した企業と言えます。
2000年代前半、朝日インテックの海外展開を大きく促進させたのは、グローバルトップメーカーの1社であり、朝日インテックのライバルでもあった米Abbott Laboratories社(以下、アボット)との間で、2003年に欧米でのPTCAガイドワイヤーの販売代理店契約を結んだことです。朝日インテック製品に対する海外での評判は当時既に高まっていたにも関わらず、同社は販路をまだ持っていませんでした。そこで欧米での販売網を確立していたアボットと提携することで、一気に海外での展開を進めていきました1)。
1)『日本証券新聞』2007年3月8日付、日本証券新聞社
なお、海外展開の足がかりを十分につくった朝日インテックは、現在、欧州地域ではアボットとの販売提携を解消し、直販体制に切り替えています。
(2)現地医療機器メーカーとの連携による海外拡販
【日機装のケース】
日機装は、化学工業用の特殊ポンプや航空機用部品などとともに、医療機器では透析装置の開発から製造販売、メンテナンスを手がけています。医療機器事業の売上高は、2002年度では282億円でしたが、2012年度には485億円と大きく成長しています。
日機装は1980年代後半に、中国および欧州向けに代理店を通じた輸出販売を開始したものの、海外売上高比率は5%前後にとどまっていました。海外展開を推進しようとした同社はまず、1993年に中国で人工腎臓装置の製造・販売を手がける上海日機装医療機器を、また1995年には韓国で人工腎臓装置の販売・アフターサービスを担う誠昶日機装を、それぞれ現地企業との合弁で設立しました。
2010年には中国でのさらなる拡販を狙い、中国の最大手の医療用具メーカーである威高(ウェイガオ)集団との間で、透析事業での戦略的業務提携の契約を締結しました。その一環として、威高集団のグループ会社と中国で人口透析装置の製造販売・メンテナンスを行う合弁会社を設立しました。狙いとしては、人工透析装置に関する日機装の技術力をベースに、現地生産を行いながら、現地企業の販売・サービス網を活用して拡販することにあります。
(3)保有する国内販路での売り上げ最大化
【エア・ウォーターのケース】
エア・ウォーターは医療用ガスの国内トップサプライヤーとして、病院の設備工事、在宅医療、病院サービスなどを含め、医療機関向けの事業を広く展開しています。2002年度の売上高225億円から2012年度には789億円と、急成長してきた企業です。
同社は、自社の強力な販売網の中で、他社製品も流通させる事業を展開しています。2013年には、以前から提携していたGE Healthcare社製の新生児関連機器に加え、分娩監視装置・分娩監視テレメーターの国内独占販売権を譲受し、GEヘルスケアのMIC(Maternal Infant Care:母体・新生児ケア)事業の全製品の国内販売権を得ました。この提携により、もともとエア・ウォーターの得意分野であった新生児・周産期関連の製品ラインの強化に加え、産科から新生児科まで、それまで以上に総合的な提案をできる体制が整いました。