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(1)検討・実行を主導する事業企画機能の設置

 検討を開始するに当たっては、内外環境の変化を客観的に分析して現状と将来のリスクを認識すること、それを経営陣に理解させること、成長戦略検討を主導すること、さらに戦略実行の進捗をモニタリングすることをミッションとする事業企画機能を置くことが重要となります。

 この機能には、国内のみならず海外を含んだ医療機器業界の動向を見通す力が求められるとともに、経営トップに対して説得力を持ち、彼らの意思決定を促す力を持ち、さらに実行時には開発・生産・営業といった各機能部門を牽制しながら動かしていく力を備えていることが望ましいといえます。ドメスティックニッチメーカーの社内にこうしたすべての要件を満たせる人材がいることは少ないため、社外の専門家を登用して一部を補完することも有効でしょう。

(2)検証可能な計画に基づくPDCAサイクルの適用

 検討した成長戦略を実行し、前に進めていくためには、PDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルを回していくことが不可欠です。特に医療機器事業においては、既存事業の収益性の高さやライフサイクルの長さに伴う実行期間の長さなどにより、改革の実行が途中で遅滞しがちになります。このため、PDCAサイクルをしっかりと回し、計画の進捗をモニタリングすることが肝要です。

 PDCAを回していくために最も重要なことは、逆説的ですが、Check(検証)できるPlan(計画)を作成することです。コンサルティングの現場でよく見られるのが、「数値に施策が紐づいていない計画」や「施策の具体的達成目標が設定されていない計画」です。計画の進捗をしっかりとモニタリングするには、数値計画だけでなくそれを実現するための施策が紐づいていること、ならびに施策の進捗を図るための目標が設定されていることが重要です。

(3)トップによる意思決定・コミットメント

 現在の収益性の高さを犠牲にしても、将来成長のための戦略や投資を検討・実行する、という経営陣の意思決定・コミットメント(関与)は欠かせません。特に複数事業の中の一事業として医療機器事業を展開しているメーカーでは、社内において、収益性の高い医療機器事業は「収益源である」と位置づけられていることが多いです。その場合に現場側は、短期的な痛み(収益減)を伴うような成長戦略は進めないほうが収益性を高く維持できるため、戦略実行へのモチベーションが減退しがちになります。

 このようなケースでは、経営陣が、収益源という位置づけをいったん外してまでも、医療機器事業の改革を実行していくという強いメッセージを、現場側に明確に示すことが重要となります。