15%の勾配まで設置可能なヒルティ製架台
一方で、ゴルフ場跡地をメガソーラーに活用する場合の課題も多い。フェアウェイといっても大小の起伏があり、傾斜が急なエリアでは、強度上、架台の設置が難しくなるケースもある。その部分への設置をあきらめると、発電量が減ってしまう。とはいえ、架台設置を容易にするために造成すると、工事費用が膨らんで初期投資が増す。設置可能面積の確保と造成費用の抑制はトレードオフの関係にあり、収益効率を最大化するには、さまざまな工夫が求められる。
そこで、久米南町のゴルフ場跡地では、15%までの勾配(約8.5度)なら設置可能なリヒテンシュタインのヒルティ社製の架台と基礎工法を導入した(関連記事)。そのうえで、ホール内の勾配を15%以内に抑える造成工事を行う。急斜面の場合、上側を掘削して、下側に盛り土して締め固めれば、勾配が緩やかになる(図5)。同じホール内で、掘削土と盛り土の量を同じにすれば、掘削土を運搬する距離が短くなり、工事費が抑制できる。
こうした掘削と盛り土の造成設計を最適化し、運搬土量を最小にするため、以下のような手順で設計を進めた。(1)サイト全体の航空測量を行い、3次元測量器を使って50cmメッシュの地盤高データを集めて3次元図面を作成。(2)環境スクリーニングにより、残置林を除いたパネル設置可能エリアと面積を特定。(3)3次元図面からフェアウェイのうねりを確認して造成の要否を確認。(4)架台の設置が可能な15%勾配にするため、掘削と盛り土のエリアを特定し、造成設計する。その際、掘削土は同じホール内で盛り土し、移動させる土量を最小化。(5)全体の土量を算出する。既存の調整池を活用するために暗渠排水など防災設計を加える(図6)。(6)様々なアレイ(パネルの列)間隔でパネルの配置レイアウトを複数作成して比較・検討し、コスト的、電気的、経済的に最も適切なレイアウトを決定。