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GaN基板を用いたGaNパワー素子

 最近では、かつては困難とされていたGaNバルク基板の開発が進んでいる。青紫色半導体レーザの製造では、ハイドライド気相成長(HVPE)法で作製されたGaN基板を用いている。同基板はこれまで口径2インチが主流であったが、現在、4~6インチ基板が登場している。

 この他、HVPE法とは別の方法で大幅な低コスト化を狙う動きがある。「Naフラックス法」や「アモノサーマル法」と呼ばれる方法である。いずれも液相法の一種で、大型結晶の大量生産に向くとされる。

 こうしたGaN基板の高品質化・大口径化・低コスト化が進めば、将来的にはGaN基板上にGaNパワー素子を製造しても、価格競争力を得られる可能性がある。GaN基板を用いれば、結晶欠陥やクラックの問題はなくなる。つまり、結晶欠陥の低減やクラックの防止のための複雑な結晶成長が不要になり、製造コストを低減可能だ。

 加えて、結晶品質の向上によって、パワー素子の性能や信頼性の向上も期待できる。GaNは導電性を備えるので、GaN基板の裏面に電極を設置することで、SiCパワー素子と同じような縦型の素子を作れる。

 現在、GaNパワー素子ではGaN on Siが中心になっているが、将来的にはGaN on GaNも出てくる可能性がある。

須田 淳(すだ・じゅん)
1969年生まれ。1992年に京都大学 工学部を卒業し、1997年に京都大学大学院 工学研究科博士課程を修了。工学博士。その後、京都大学助手、講師を経て現職。この間に、米University of California, Berkeleyの客員研究員や科学技術振興機構・さきがけ研究「ナノと物性」プロジェクトの研究員などを経験。専門は、ワイドギャップ半導体の結晶成長や物性制御、パワーデバイスやMEMSセンサーデバイスへの応用。