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2. 結晶育成・検出器製作

図2 2段の水平帯域炉を用いたTlBr結晶の純化の様子。
図3 切り出し、表面加工後のTlBr結晶。

 半導体放射線検出器用材料には、入射放射線によって生成された電子・正孔対を効率よく収集するため高い電荷輸送特性が求められる。TlBr結晶は、帯域精製による純化を施すことにより、その電荷輸送特性が飛躍的に向上する10)。市販の純度99.99~99.999%程度のTlBr素材を帯域精製法によって純化し、最後に低速で帯溶融を1回行うことにより半導体検出器用のTlBr結晶を得ることができる。TlBrは融点が低いため、実際には図2に示すような簡便な電気炉によって結晶の純化、育成を行うことができる。育成した結晶をワイヤソーにより切り出し、電極形成面に機械研磨、エッチングを施し、真空蒸着法により電極を形成することで放射線検出器を製作することができる。図3は切り出し、表面加工したTlBr結晶である。

3. 3次元位置有感ピクセル型TlBr検出器

 ピクセル電極を有する半導体検出器は、水平方向についてはそのピクセル位置から、深さ方向については陰極対陽極信号比もしくは電子のドリフト時間から、入射ガンマ線の相互作用位置を3次元的に決定することができる15)。半導体3次元検出器は、1つの結晶内で複数回ガンマ線が相互作用を起こしてもそれぞれの位置と付与エネルギーを測定することができ、複数回相互作用を判別できないシンチレーション3次元検出器よりも優れている。ピクセル型半導体検出器は位置分解能、エネルギー分解能に優れていることから、単にコリメータを用いたガンマカメラとしてだけではなく、ガンマ線のコンプトンイメージング用検出器としても大変有望である。ここでは筆者らが開発したTlBr結晶を用いた3次元位置有感型検出器について紹介する16)

 図4にピクセル型TlBr検出器によるガンマ線の3次元測定の例を示す。用いたTlBr検出器は4.36mm厚で、陰極は全面が電極となっている。陰極に対向する陽極には1mm×1mmのピクセル電極が4個形成され、その周囲にガード電極が形成されている。検出器は室温で動作し、陰極には500Vの電圧を印加した。検出器陰極面のセシウム137(137Cs)から662keVのガンマ線を照射した。各電極は電荷有感型前置増幅器に接続されており、その出力波形を垂直分解能14bitのデジタイザを用いて10Ms/sで取り込み、PCを用いて処理を行った。図4(a)に示すようにガンマ線の水平方向での相互作用位置に対応して、それぞれのピクセルから137Csのスペクトルが得られることがわかる。さらに、図4(b)に示すように陰極と陽極の信号比を取ることにより、ガンマ線の相互作用深さごとにスペクトルが得られることがわかる。このようにピクセル型検出器では入射ガンマ線の相互作用位置を3次元的に決定することができる。

図4 TlBr検出器から得られた137Csガンマ線スペクトル。(a)各ピクセルのスペクトル。(b)ピクセル4においてガンマ線相互作用深さごとに得られたスペクトル。
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本記事は、応用物理学会発行の機関誌『応用物理』、第83巻、第9号に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには応用物理学会の会員登録が必要です。会員登録に関して詳しくはこちらから(応用物理学会のホームページへのリンク)。全文を閲覧するにはこちらから(応用物理学会のホームページ内、当該記事へのリンク)