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 性能低下の大きな要因となる電子リークは、SSDの動作/非動作、電源のオン/オフに関係なく生じる。電子が漏出(リーク)すると、電子の量(電圧)が変わってしまう。また、トンネル酸化膜が劣化していくと、電荷トラップ(電子を捕獲する欠陥)が増加するため、電子リークの速度が増加してしまう(図1)。つまり、従来と同じ電子リーク量であっても、一つひとつの記録素子が微細化すれば、電圧変動幅は増加し、データは破損・消失する可能性が高まる。

図1 電子リークはトンネル酸化膜の劣化が要因
絶縁膜(トンネル酸化膜)が劣化していくと、電子リーク速度が上昇する。
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 また、低温および高温下でも電子リーク量が増えてしまう。低温時には、トンネル酸化膜にトラップされる電子は低温なほど少ないが、電荷トラップが起きる場所が低温なほど基板に近い位置になるため、基板面側から電子がリークしやすい。

 一方、高温時には、高温に起因した運動エネルギー活性化に伴い、電子リーク発生量は大きくなる。結果、低温下や高温下の環境はSSDのデータ保持には適さないといえる。

 この他、SSDの書き換え処理間隔によって電子リークは大きな影響を受けることが分かっている。SSDを短い時間間隔で書き込み処理を続けると、電子リークの影響を早い段階で受けやすく、データ破損が発生しやすいという傾向がある。

 さらに、トンネル酸化膜の磨耗度は同じでも動作温度が低いほど、また書き換え間隔が短いほど、電子リークが早く始まることが分かっている。

 個人的な見解であるが、書き換え間隔が短ければ短いほど、浮遊ゲートとトンネル酸化膜の電荷トラップ部分にある電子の総数のうち、後者の電子の比率が増えるため、結果として電子リークを開始する時間が早くなるのではないかと思っている。