地熱や小水力を保留解除しない理由

――九電は10月21日に、50kW未満の低圧連系のうち「敷地分割」ではないものについては、保留を解除しました(低圧10kW未満の余剰買い取りについてはもともと保留対象でない)。一方で、地熱や小水力、バイオマスなど、出力変動の少ない再エネについては引き続き保留の対象とし、一部で報道された保留解除の観測記事を明確に否定しました。

九州電力・能見和司執行役員・経営企画本部副本部長

能見 まず、出力変動の少ない地熱やバイオマスなども保留の対象にしている点については、2つの理由があります。1つは、制度面です。今のFITでは再エネの種類を区別していないため、地熱や小水力だけ受け入れるというような差別的な扱いができません。もう1つは、技術面です。今回、再エネを保留した理由は、出力変動による系統への悪影響というより、需要を上回る再エネ全体の供給量です。出力が変動するか、しないかは無関係なのです。

 ただ、系統を運用する側から見て、地熱や小水力、バイオマスが、扱いやすい電源であることは間違いありません。稼働までの準備に時間がかかることもあり、なんとか受け入れたいという気持ちです。政府の新エネルギー小委員会でも、再エネの中でも安定電源を優遇して導入を増やすべきという議論がありました。再エネの導入量をkWh(発電量)で伸ばすなら、太陽光以外の再エネを政策的に増やすことも必要でしょう。

――保留を解除した50kW未満の低圧連系のうち、「敷地分割」を対象から外し、引き続き保留としたのはなぜですか。高圧・特別高圧で接続する発電設備の規模を持つのに、50kW未満に分割して低圧で接続することは、今年度からは禁止されました。しかし、前年度までは制度上、違法性はありませんでした。

能見 ご指摘の通り、法律は遡及しないので、前年度に設備認定を受けた「敷地分割」による低圧案件は、法的に違法性はありません。しかし、明らかに法の趣旨には反しており、しかも保留中の敷地分割の設備容量が約250万kWと膨大な規模になることから、今回は保留のままにしました。敷地分割ではない50kW未満の低圧案件は、約32万kWに過ぎず、今回はこれが保留解除になりました。