政府は2011年3月の東日本大震災を機に、東海地方に影響を及ぼす南海トラフ地震の規模と津波高の再評価を実施した*1。中部電力は政府の再評価結果を受けて、浜岡原発に対して原子力規制委員会が定めた新規制基準に適合する措置を講じている。
実は、筆者は1984~1988年にかけて通産省(当時)管轄の原子力工学試験センター原子力安全解析所で、浜岡原発4号機の安全審査のためのクロスチェック解析に従事した経験がある。それ故、同原発の商業運転状況には高い関心を持ち続けてきた。本稿は、浜岡原発の社会的位置付けと重要性を鑑み、筆者が科学技術社会学(STS)に基づいた客観的評価を試みたものである。地震や津波についての事実関係は、信頼性の高い情報が記載されている静岡県防災・原子力学術会議議事録と中部電力資料を確認した。
浜岡原発の概要と基準地震動
表1に浜岡原発の概要を示す。1号機と2号機は、2009年1月に商業運転を終了し、現在、廃止措置中であり、日本における最初の商業用軽水炉の廃止措置例である。
表2は、原子力規制委員会が定めた新規制基準項目である(括弧内は、筆者による補足)。
ここで、原発の耐震設計において基準とする地震の大きさ「基準地震動」についてみてみよう。基準地震動は、原発の耐震設計の基準となる周辺で発生する可能性のある最大規模の地震の揺れである。