地震は活断層起因型とプレート起因型に分類される。浜岡原発の耐震評価において、最も大きな影響をもたらすと推定されている地震は、プレート起因型の南海トラフ地震である(南海トラフ地震は、マグニチュードがより厳しく評価されているものの、東日本大震災以降の世間の情勢を反映して過去に発生した東海地震+東南海地震+南海地震をリネームしただけであって、本質的な変更ではないように思える)。
プレート起因型地震は、複数のプレートのかみ合いにともなう地殻の歪みによって生じるため時間が経てば、必ず発生する。しかし、発生事例が少ないため、統計処理に基づく信頼性の高い発生周期を推定することは難しい。事例が少ないため150年周期説も根拠に乏しい。
従って、浜岡原発の地震や津波の影響を定量的に判断できるひとつの目安は確率論的リスク評価(PRA)によって導出された年間平均の炉心損傷確率の値である。前述の重大事故対策を施す前の値は、津波に対しては、7.4×10-6/炉・年であることを資料で明らかにしている。地震の炉心損傷発生確率については、筆者の質問に対して10-6/炉・年オーダーであると回答しているだけだが、おそらく津波と同様に7×10-6/炉・年程度だろうと推定される。
炉心損傷確率に大きく影響しているのは、地震は全交流電源喪失の影響、津波は津波浸水にともなう全注水機能喪失の影響である。それぞれの対策としては、前者には緊急時ガスタービン発電機による給電と原子炉格納容器のベントフィルター系による除熱が、後者には、原子炉建屋内浸水防止対策と緊急時海水取水系による除熱が有効とされている。
筆者の見積もりでは、これらの重大事故対策が施されれば、地震、津波とも炉心損傷確率は、3×10-6/炉・年まで低減できると考えられる。これは、通常運転時の機器故障や人為ミスといった内部事象にともなう炉心損傷確率の値に近い。PRAの計算モデルと計算想定が的確であることが前提だが、だとすると地震や津波の影響は、機器故障や人為ミスに比べて突出して懸念すべきレベルにあるわけではないと解釈できる。