「高齢化問題のもう一つの側面は少子化。高齢者と胎児・乳児という“両極”をしっかり押さえることが重要だ。高齢者のケアに気を取られ、周産期医療の重要性を見過ごしてはならない」――。「第18回 日本遠隔医療学会学術大会(JTTA 2014)」(2014年10月25~26日、長崎大学医学部)のランチョンセミナーで、インターシステムズジャパン 代表取締役社長の植松裕史氏はこう訴えた。
日本遠隔医療学会会長の原量宏氏(香川大学 名誉教授)も同調する。「高齢者の生体情報を得ることは(技術的にも社会的にも)さほど難しくない。最も困難なのは、胎児の生体情報を取り出すこと。(羊水に浮かぶ)“見えない魚”から情報を取り出すようなものだからだ。こうした課題を克服し、周産期医療を充実させて初めて、PHR(personal health record)は本物になる」。
日本遠隔医療学会は2012年に「周産期医療分科会」を設立。周産期電子カルテや電子母子手帳、モバイル型の胎児生体情報モニタリング機器といった、周産期医療とICTの融合領域での実証実験を進めてきた。今回の学会では分科会企画として、「日本における周産期遠隔医療・地域医療ICTの最新状況と国際展開」と題するシンポジウムを開催した。登壇したのは、周産期医療にICTを積極的に採り入れている医療機関や、日本発の周産期遠隔医療ツールの海外展開を目指すNPO法人などだ。