両面受光パネルへの移行に向けた第一歩
メガソーラーには、約8万1000枚の太陽光パネルを設置した。約10MW分ずつ、既存の太陽光パネル(3万9872枚)と、新たに開発した両面ガラスのパネル(4万1216枚)を設置した(図4)。
両面ガラスの太陽光パネルは、今後のメガソーラーの低コスト化、高出力化、高信頼化を可能にする技術の一つとして注目されている。2枚のガラスで挟み込んだ密閉構造にするため、既存の太陽光パネルのバックシートとアルミフレームが不要になる。
ただ、現時点では、低コスト化、高出力化、高信頼化のうち、密閉性の向上による高信頼化のみ、満たすことができている。
高信頼化は、裏面の封止に、樹脂製のバックシートではなく、ガラスを使うことで水分の侵入による劣化のリスクが小さくなることで実現する。
塩害地、砂漠など過酷な環境での使用に向き、PID(Potential Induced Degradation)と呼ばれる、高温多湿下で起きる劣化現象への対策にもなる。
低コスト化と高出力化の利点を実現するためには、裏側も透明という両面ガラスの利点を生かせる「両面受光型太陽電池セル」の低コスト化と、薄厚ガラスを使った太陽光パネルの製造コストを下げる必要がある。
現時点でも、アルミフレームとバックシートがなくなることで部材点数は減るが、薄厚ガラスが1枚増えることによるコスト増と相殺され、トータルでのコスト削減には至っていないという。
両面受光太陽電池セルを、両面ガラスのパネルに採用すると、反射光による裏面の発電が寄与し、従来よりも1~2割程度、発電量が増加する。それに見合ったコストで量産できれば、普及する可能性がある。
ベンチャー企業のPVG Solutions(横浜市港北区)が、すでに両面受光型セルを商品化しており、海外メーカーがそれを使った両面ガラスのパネルを製品化している。
ただ、低コスト化の進む片面受光のパネルに比べ、現状では発電コストで競争力が十分にはなく、裏面の受光量が相対的に多い雪国などに採用が限られている(関連ニュース1)。
両面ガラスのパネルに両面受光でなく、通常の片面受光セルを採用した場合、白いバックシートに比べ、セル間の光が抜けるので、発電効率は下がってしまう。
そこで、裏面のガラスに反射加工を施すことで、セル間の光の一部をパネル内に反射させ、既存の片面受光の太陽電池セルに入光させることで、出力低下を防ぐ手法が採られる。
一方、裏面に採用するガラスのコスト削減に関しては、まず、価格の安い既存の3.2mm厚のガラスを使って製造することも考えられるが、それは二つの理由から難しいという。
一つは、重量増が受け入れられないためである。現在のガラスは、結晶系太陽光パネルの重量の約7割を占める。もう一つは、貼り合わせ装置などの太陽光パネルの製造プロセスに適用できる厚さの上限を超えてしまうため、製造装置を代えたり、大幅に改造しなければならなくなってしまうためである。
従って、現実的には薄厚ガラスを使うしかない。薄厚ガラスを使った太陽光パネルの製造コストを下げるには、二つの要素がある。薄厚ガラス自体のコスト低下と、薄厚ガラスを使った太陽光パネルの製造コストの低下である。
薄厚ガラスのコストは、量産効果によるコスト低下とともに、薄厚ガラスの製造プロセスの改良によって低下する。薄厚ガラスを使った太陽光パネルの製造コストは、貼り合わせ装置や搬送装置の改良や運用方法の工夫で下がる余地がある。