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本記事は、日経エレクトロニクス2011年9月19日号に掲載した特集「燃料電池車は消えたのか?」から抜粋したものです。肩書などは当時のままです。

ここ数年の技術開発により、燃料電池の量産が2015年をメドに始まる。悩みの種だった水素供給インフラの先行整備も道筋が見えてきた。先行する家庭用燃料電池とともに、燃料電池の普及が現実味を帯び始めている。

 500万円程度の価格で燃料電池車(FCV)の市場投入が2015年から始まる─。最近の電気自動車(EV)ブームの影に隠れて姿を消していたFCVだが、ここへきて普及への道筋が見えてきた(図1)。

図1 2015年から燃料電池が普及へ
大手自動車メーカー各社は、2015年をメドに、価格を500万円程度まで抑えたFCVを投入する。2015年以降、水素供給インフラの整備や家庭用燃料電池の普及が進み、2030年には燃料電池の時代が到来しそうだ。
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 口火を切ったのはトヨタ自動車だ。同社は、2010年11月に開催した「トヨタ環境技術取材会」で「セダン・タイプのFCVを2015年ごろから投入する。お客様に納得していただける価格で提供する」(同社 代表取締役副社長の内山田竹志氏)と宣言した。

 トヨタ自動車に加えて、日産自動車やホンダも2015年をメドにFCVを投入すべく動きだした。2011年1月にはトヨタ自動車と日産自動車、ホンダの3社が水素供給事業者10社と共同宣言を発表した注1)

注1) 水素供給事業者は、JX日鉱日石エネルギー、出光興産、岩谷産業、大阪ガス、コスモ石油、西部ガス、昭和シェル石油、大陽日酸、東京ガス、東邦ガスの10社。

 2015年ごろにFCVを国内で市場投入するのに加えて、普及の最大のネックとなっている水素供給インフラの整備を本格的に進めるというものだ。

 FCVの盛り上がりは、日本市場に閉じた話ではない。世界では、ドイツDaimler社や米General Motors(GM)社、韓国Hyundai Motor社なども2015年ごろの投入を狙い、しのぎを削り始めている。

 FCVが本格的に市場投入されるのを、材料メーカーも実感し始めている。燃料電池の電極用触媒を手掛ける田中貴金属工業は「我々も製造ラインの拡大など、量産の準備に入った」(同社 技術開発部門 FC触媒開発部 副部長の小椋文昭氏)と語る。