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パネルディスカッションを実施

 続けて実施されたパネルディスカッションでは、谷下氏に加え、コーディネーター、開発企業それぞれの立場から2人のゲストが参加した。コーディネーターは医工連携コーディネータ協議会会員/KHEコンサルティング代表/KHE国際特許事務所所長の小西頴氏。開発企業からはナシモト工業 技術部技師の梨本俊晴氏が登壇した。

パネルディスカッションの様子。左から谷下氏、小西氏、梨本氏
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 小西氏は前述の血液吸引器の仲介役、梨本氏は把持力制御の鉗子の開発担当として臨んだ。谷下氏が述べたように、ユーザー評価は基本非開示の原則だが、今回のイベントでの結果報告に協力する条件で小西氏と梨本氏は評価を依頼した。

 長く医療業界で過ごし、米国での実務経験も豊富な小西氏は、あるナノテク加工技術を持った機械加工の開発企業から依頼を受けた際に、今回のユーザー評価プログラムを薦めた。「もともとその企業は、循環器系の医師から要望を受けて、吸引器の改良版作成を依頼されていた。そしてそれが彼らにとって医療機器参入のきっかけだった。そこでまず、ユーザー評価を受けてみたらいいとアドバイスした。初期段階の評価をおろそかにしてしまうと、医療機器開発は失敗の確率が大きくなる。ビジネスが失敗しないためにも必要と考えた」(小西氏)。

 一方、梨本氏が在籍する企業は、金属加工で有名な新潟県三条市にある。シュレッダー、稲刈り用コンバインのバリカン刃といった産業用の機械刃物、作業用工具メーカーからのOEMによるペンチやニッパなど、これまでは医療機器とは縁のない機器を製造してきた。

 「そうした中で、挟んだものを痛めないような機構を持った工具があったら面白いのではないか」と着想した。そして三条市から助成金をもらい、3年間試行錯誤をして、金属のたわみを利用した機構を開発。特許を取得した。

 今回ユーザー評価をお願いした鉗子型ハンドルは、その中の1つ。この機構がより生きる分野はどのようなものかと考えた末に、鉗子のハンドルへの応用を発案した。これによって臓器を挟む際の安全性、質の向上ができるのではないかということだ。

 つまり、この鉗子は企業から発信して開発したもの。医師のニーズに沿ったものではない。それゆえ、「医師の意見をうかがい、有効性を判断する術としてこのユーザー評価を利用した」(梨本氏)。