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企業と医師が直接話をすべきかどうか

 司会者からの「評価を試してみてのメリットは?」という質問に対しては、それぞれ次のように答えた。

 「複数の医師の意見をもらえるのは非常にありがたい。また、機器のスペックが対象臓器によって変わるという指摘は目からウロコだった。ビジネスをやるからにはボリュームゾーンを狙わなくてはいけない。そのためには多くの医師の意見を聞いて、妥当な範囲を判断し、それに合わせて機器を改良していかなくてはいけない。最先端を狙うのももちろんいいのだが、それがビジネスが成り立つボリュームとして成り立つかどうかを見極めることも大事だ」(小西氏)。

 「短期間に複数の医師の意見をもらえるというのは大変貴重だった。評価には賛否があり、その内容が改良や、ターゲットを絞るという点で大変有効だった。現場の医師の立場からすると、今使っている機器をわざわざ変えてまで乗り換える必要がないと考えるかもしれない。一方で弊社の機器に可能性を感じてくれた医師もいた。そうした意味で、現場の医師にも有効なアイディアを与えられたのではないかと感じている」(梨本氏)。

 実際の評価について谷下氏は、「こういう機器は日常的に使っているので、いろんな思いがある。医師たちはその思いをつぶやくように五月雨式に言ってくる。まとめてみると実はいいポイントを突いているということが数多くあった。自分もアイディアを持っており、企業と組んで何か開発したいと話す医師もいた」と語った。

 また、評価制度そのものに対する考えとして、梨本氏は「弊社が直接、医師の意見を聞けるならそれが好ましい。その場で相互理解を深めるほうが発展する可能性は高い。医師の希望があれば、開発側が同席することがあってもいいのではないか」と発言。一方で、谷下氏は「私の経験上、直接医師と開発企業が話をするのは避けたほうがいい。よほど信頼している間柄ならまだしも、やはり本音は引き出せない。我々第三者が入ったことで言いたいことを言い、それが当を得た意見になっている」と答えた。

 最後に谷下氏は、ユーザー評価の今後の展開について次のように締めくくった。「ものづくりコモンズでは医師のネットワークを増やす活動をずっと続けている。開発に対してマインドを持っている医師を少しでも増やしていく。その数が増えてくれば、ユーザー評価も軌道に乗ってくる。以前に比べると先生方の意識も相当変わってきたと言える。今後は、地域単位でユーザー評価を受けてもらうことも可能だろう。さらに政府の国産医療機器創出促進事業もある。各病院の中に人材育成プログラムが設置されれば、医師の主導によって物事が動いていく。この1~2年でかなり状況が変わっていくのではないかと期待している」。