東北大学 加齢医学研究所 老年医学分野 准教授の古川勝敏氏は、「第33回 日本認知症学会学術集会」(2014年11月29日~12月1日、パシフィコ横浜)のランチョンセミナー「認知症診療・研究における神経画像の可能性を考える――tauを中心に――」(共催:ノバルティス ファーマ)に登壇。アルツハイマー病に代表される認知症の原因物質を、PETなどの画像診断装置でとらえる研究の最前線を紹介した。講演への注目度は高く、大人数が入る会場で立ち見が出る盛況ぶりだった。
認知症の病態を反映する因子(バイオマーカー)には、体液から取る生化学マーカーと、放射線画像で可視化するマーカーの2種類がある。このうち放射線画像による可視化が近年、目覚ましい進歩を遂げている。PETと特殊な放射性薬剤(プローブ)を使い、認知症の原因物質を発症前の段階から可視化する試みが盛んだ(関連記事1、同2)。
ここ10年でプローブ開発が大きく前進
この分野の研究が大きく動き始めたのは2004年。米University of Pittsburghの研究グループが「Pittsburgh Compound B(PiB)」と呼ぶプローブを使って、アルツハイマー病の発症に関わるたんぱく質「アミロイドβ」を画像化することに成功したのだ。2006年には、米University of California, Los Angeles(UCLA)の研究グループが、アルツハイマー病との関連が指摘されているたんぱく質「タウ」の画像化に使えるプローブ「FDDNP」を開発した。
古川氏は、米国のグループを追う形で東北大学が開発した、アミロイドβおよびタウを可視化するPET用プローブと、それを用いた検証実験の結果を紹介した。まず、アミロイドβ向けプローブについては、2010年に「BF-227」を開発。このプローブを使った検証実験では、軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)患者のうち、BF-227を使ってPET画像の異常部位を描出できた患者の多くが、後にアルツハイマー病を発症した。このように、アミロイドβの蓄積が「MCIからアルツハイマー病へ移行するクリティカルサインであることは間違いない」(古川氏)という。