ラットの心電をとらえる
今回のセンサーの最大の特徴は、測定対象のダイナミックな動きに追従して生体情報を測定できること。外からひずみなどの力が加わっても、極薄フィルムがしわをくんでひずみを吸収し、電極は粘着性ゲルを介して測定対象と良好なコンタクトを保つ。 実際、試作したセンサーを膨らんだ風船の表面に貼り、空気を抜いて100%の圧縮ひずみを加えても、機械的にはがれたり、電気的特性が変化したりしなかったという。従来の硬いセンサーでは、生体の動きと干渉して生体情報を正しく捉えられないのに対し、今回のセンサーはこの問題も避けられる。 染谷氏らは、開発したセンサーをラットの心臓表面に貼り、心電を測る実験を行った。通常の金属電極を使うセンサーでは、接触位置のずれが雑音として心電波形に重畳される。これに対し、粘着性ゲルを使う今回のセンサーでは心電を安定して精度良く測定でき、心電波形に特徴的な「細かいストラクチャーも捉えることができた」(同氏)。ラットの心臓表面に貼り付けたセンサーが24時間以上にわたって位置ずれを起こさないこともMRIで確認。ゲル素材中のポリビニルアルコールは時間が経過すると溶けて粘着性を失うため、測定後は簡単に外すことが可能だ。 心臓表面にセンサーを貼って多点で測定するという今回の方法は、体の外からでは難しい「心臓の電気信号分布を可視化できる」(染谷氏)というメリットがある。研究グループは、冠動脈をふさいで狭心症を起こしたラットの心臓の信号伝搬を捉えることにも成功している。