コンピューターで製品や部品の強度や動く様子、性能などをシミュレーションするCAE(Computer aided Engineering)では、現実世界を忠実に写し取る大規模で緻密な計算の事例が増えている。市販のツールも、計算資源を節約することと同時に、何が起きているかを細かく見る方向に進化を続けている。
2014年8月末に鉄道総合技術研究所(鉄道総研)の一般公開で展示されていた研究成果の1つに、線路(軌道)を車両が通るときの様子を有限要素法と個別要素法で解析した、というものがあった(図1)。軌道の砕石(バラスト)は、通過する列車の振動を弱めるクッションの役割を持つが、時間が経つと部分的に沈下するなどして乱れが生じるため、保線作業が欠かせない。その作業をいかに軽減できるか、という問題意識での解析計算だ。解析モデルでは、バラストの石1つひとつを多面体で表現して有限要素に分割、まくらぎ(コンクリート製)の内部構造も詳細に定義したという。
これで解析したのは、バラストが弾性体として伸び縮みすることによる振動。砕石は基本的に振動を消散させる機能を持つが、周波数40Hz程度と、700Hz程度の振動はあまり消散できず、一緒に振動してしまうことが実測の結果分かっていた。バラストは大きく振動すると、崩れや乱れが生じる原因になる。前者はバラストが剛体(ばね)として動く振動、後者は弾性体として伸縮する振動であることが、解析計算の結果分かったという。